今宵の一枚はルー・タバキンのTrackin'、1976年9月の録音。レーベルはRCA。このLPは大きな特徴がある。ダイレクトカッティング盤なのだ。当時はLP制作にはかならずいったんオープンリールテープ(2トラック38Cm/s,俗に言う2トラ38)に録音の上編集し、その後ラッカー盤(原盤)に音を刻み込み、複製し、LPの誕生となる。この一連のプロセスのテープ録音を省略し、音を直接ラッカー盤に刻み込む、まさにその名の通りダイレクトカッティングである。エンジニアもミュージシャンもたいへん緊張を強いられるわけで、聴いていてもヒリヒリ、ピリピリする空気を感じることができる。
全体の音が厚いのだが、当然ながらルータバキンのサックスがとりわけ分厚く、音の壁のようである。圧倒的といってもよいほどで、存在感が際立つ。秋吉敏子のピアノも強靭でとりわけ、B面の2曲目サマータイムのピアノは強烈な打音。流れるような演奏ながら一音一音が粒立っている、シェリーマンのドラムもクリアーでモワッとした混濁感がない。やはりすごい録音である。
sideA
1.I'm all smile(from the Broadway Musical "The Yearling")
2.Cotton tail
sideB
1.Trackin'n
2.Summer time
(personnel)
Lew Tabackin Quartet
Lew Tabackin(ts,flt)
Toshiko Akiyoshi(piano)
Bob Daugherty(bass)
Shelly Manne(drums)