私が子供の頃のことですが、冬休みに家族で山形蔵王までスキーに行ったことが何度かありました。新幹線開業前ですので「やまばと」や「つばさ」といった奥羽本線の特急に乗って、山形を目指すわけです。上り列車が雪をたくさんつけて走る姿には旅情をかきたてられましたし、板谷峠を越えて山形に着いたときは、東京とは全く違う景色に、遠くまで来たなと思ったものです。
そんなある年の冬、父が「今年は臨時列車のつばさ51号のチケットしか取れなかったよ」と言っていました。果たして上野駅まで行ってみると、そこに停まっていたのは485系ではなく、青い14系座席車でした。雑誌等でしか見たことが無い車輛でしたので、私とやはり汽車好きの兄にとっては嬉しいサプライズでした。車内は特に電車特急とはあまり変わらず、リクライニングシートが「簡易型」と呼ばれる、踏ん張っていないと背もたれが戻ってしまうタイプではありましたが、快適に過ごしました。
小山あたりを過ぎた頃に「ちょっと列車内を探検してくるか」と父と私たちは他の車輌の様子を見に行きました。普通車を何輌か歩いた後に、やはり電車特急と同じグリーン車にたどりつきました。そしてさらにそこを抜けると、食堂車が・・・あれ、14系座席車って普通車だけでは?と思われた方もいらっしゃるでしょう。そう、このグリーン車と食堂車は、模型だけの架空のものです。
14系座席車は多客時や団体輸送などのために作られた形式で、食堂車はもちろんのこと、グリーン車すらありませんでした。編成としてのまとまりも含めて個人的には嫌いではなかったのですが、やはり特急用の形式であるならば、食堂車とグリーン車があったら面白いだろうなと思っていました。そこで我が家の14系(カトー製品)に増備してみようとなったのです。実は以前にも14系座席車にグリーン車、食堂車を入れたことがあり、その時は白帯も塗装で再現しましたが、上下で違う微妙な帯の太さが再現できませんでした。そこで今回、もう一度別の手法でやってみようとなったのです。
まずグリーン車の方ですが、カトーのサロ481を種車にしました。車体と床板、屋根もばらして車体に1000番のサーフェーサーを軽く吹いた後で青20号を塗りました。青20号はグリーンマックスのカラーでもありますが、カトーの14系の車体色からはやや離れています。そこで今回はインレタ等でおなじみのトレジャータウンから発売の塗料を調達しまして、こちらをエアブラシで吹きました。大容量の瓶に入っているので使い切るまでが大変そうです。だいぷ色が近づいた感じです。
そして食堂車の方ですが、こちらはサシ481を使っています。
ただこちらの場合はグリーン車ほど簡単ではありません。サシ481は車体の妻面に簡易運転台を取り付けていますのでアクセントではありますが、こちらは窓部をプラ板でふさぎ、灯火のモールドを削り、屋根上の前照灯も削り取りました。
内装も色差ししました。グリーン車は背もたれ、ひじ掛けの白いカバーを塗装で再現しました。食堂車はテーブルを白で、椅子は黄色くしました。
また、屋根の色は銀色で製品化されていましたが、ねずみ色1号に塗っています。
さて、車体の帯ですが、最近ではいくつかのメーカーから「ブルートレイン用白帯」というのが出ていると聞き、買ってみました。ところがあるデカールは私の貼り方が悪いのか、まっすぐ貼ることが難しく感じました。もう一社のデカールの方は水に浸したとたんにバラバラに割れはじめてしまい、おそらくお店に長い期間あって劣化したのかなと感じさせました。ちなみに「ブルートレインの白い帯」については上の帯幅が1/150では0.54mm、下の幅が0.4mmとなっています。
そこでこれに近い帯幅でデカールは無いかと探してみたところ、カーモデル用のデカールなどで0.5mm、0.4mmとして売られているものがあり、それを使ってみることにしました。シルクスクリーン印刷で軟化剤などとの相性も良く、なんとか貼ることができました。0.54mmと0.5mmは確かに若干の違いがあるのですが、自分としては納得できる仕上がりになりました。
車番についてはグリーン車の方はオロ14となりました。食堂車はオシ14-100番台を名乗っています。寝台車の方の14系に食堂車としてオシ14という形式がありますのが、座席車と組む方はグループも違うため、別の車輌ということで100番台を名乗っています。
車体を組立て、台車をはめ、クーラーのパーツもわざわざ用意した14系座席車用の別売りパーツを使用しました。最後に妻面に電車には無かったホロ枠を接着しました。
これで完成です。どうにか冬の多客時に間に合いました。グリーン車、食堂車の車高が若干低いのですが、仕方ないところです。編成も6両から8両に増えました。スハフ14の発電機では6輌分しか賄えないのではというご指摘もありますが、そこは模型と言うことでご勘弁ください。こうして我が家にも架空の車輌を含めたかつての奥羽本線が再現できそうです。