ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

【映画】もののけ姫:ナウシカから始まった宮崎駿の世界観の終着点

2011年07月02日 | 映画♪
久しぶりに「もののけ姫」を観る。改めてエボシ様がいい存在感をだしているなぁ、と実感。2004年に「もののけ姫」論というか、宮崎駿論というか、「ナウシカ」から「紅の豚」、そして「もののけ姫」へとつらなる変遷について想像をめぐらしたことがある。

 もののけ姫 : 「ナウシカ」という理想の喪失と宮崎駿がたどり着いた地平


改めてこの作品を眺めてみても、やはり宮崎駿の辿りついた1つの地平なのだろうと思う。

エボシが目指した世界。文明の力によって「人」を豊かにし、「女」たちに自由を与え、「差別」を廃そうとする世界。それは「戦後日本」や「近代」の目指してきたことそのものだ。そしてそれはかっては輝きに満ちたものだったのだろう。

しかしそうした「近代」や「戦後民主主義」は同時に「人間中心主義」でしかなく、文明の発展のためには「自然」の破壊を「是」とし、あるいは自然を開発し「尽くす」ことを容認する。そして文明の発展のためには、自然や非合理的な存在≒「神」や「自然崇拝」は障害とみなされ、その根本の部分で「神殺し」(≒非神話化)を推し進める。ディタラポッチ亡き世界には、もう「神」は存在しないのだ。

またタタラ場と対立する「自然」も、決してナウシカの頃のような「恩恵」を与えてくれるだけの存在ではない。ディタラポッチは「生」と「死」の両方を司る存在であり、もののけたちも互いが捕食の対象となる世界だ。きれいごとだけの世界ではない。

全てが「正」と「悪」に割り切れない世界。それが現実の世界だ。

ナウシカの「理想」の世界からもののけ姫の「現実」へ。そしてその現実を生き抜くための覚悟をこの作品では描かれていたのだろう。

映画「風の谷のナウシカ」が上映されたのは1984年。その時点では完結していなかった漫画版「風の谷のナウシカ」が休載期間を経て完結したのが1994年。漫画自体もそのストーリーはどんどん深みをまし、「もののけ姫」の世界観と重なり合っていく。

宮崎駿にとってはナウシカから始まっりもののけ姫で1つの世界観が完結したということだろう。


【評価】

総合:★★★★☆
物語の深み:★★★★★
アメリカでは理解されないだろう度:★★★★☆

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もののけ姫 : 「ナウシカ」という理想の喪失と宮崎駿がたどり着いた地平

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2 コメント

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Unknown (ガンガンガン速)
2011-07-02 01:21:43
beerさんももののけ好きでしたか。私も大好きで何回見たことか。えぼしの築きたかった世界は日本の戦後や近代の動きに近い、深いです!宮崎映画って、メッセージが深いですよね。

暑くなってくるとビールがおいしいですね。仕事のあとのビール最高です。
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すげぇ (もののけ姫 DVD BOX)
2011-10-28 12:37:52
ブログオーナーさんは宮崎駿の根強いファンと見られています。二つの作品を結びつけて分析すること ありがとう 私見たい初めて宮崎駿様の作品を見る人にとっていい収穫と言えるんです。
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