ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

スティーブジョブズCEO引退。シンプルさの重要性とプレゼン能力

2011年08月27日 | ビジネス
ついにスティープジョブズがCEOを引退する。その後のレポートを見ている限り、一時的には株価への影響はあるかもしれないが、既にAppleはこの日のために準備を行ってきており、後任のティム・クック氏やAppleのデザインを担っているジョナサン・アイブ氏を中心に、引き続き市場での地位を維持できるような「企業」になっているという。

 アップルのS・ジョブズ氏、CEOを辞任--後任はCOOクック氏 - CNET Japan
 米Gartner、Jobs氏のApple CEO退任の影響を分析 - ニュース:ITpro

どうしてもAppleというとスティーブジョブズのカリスマ性・アイデア・リーダーシップで支えられているというイメージが強かったけれど、既に1人の天才的「個人」に頼らなくても成長できる「企業」になっているのかもしれない。

ちょうどiPadの成功の時期、僕はネットサービスに携わっていた時期で、どうやればWEBサイトが使いやすくなるか、どうなサービスを開発すれば、今の二番煎じ的なサイトから脱却できるかを考えていた。そんな中で、iTunesやiPodの「シンプルさ」はかなり影響を受けたと思う。

「追加することではなく、削ぎ落とすことで、そのサービスの魅力は高まる」

そんな今では当たり前ではあるけれど、開発側からすると受け入れにくい「セオリー」をいともたやすく具現化したのだから。

このシンプルさを追求するスタイルは、スティーブジョブズのプレゼンにも垣間見れる。

「ジョブズ氏のプレゼンテーションにおける特徴の1つは、ストーリーのシンプルさにある。与える情報量を絞り込み、絵で、動作で分かりやすく説明する。ここで提示されるのは“概念”や“思想”のような形のないものではなく、あくまで目の前にある製品の概要やメリットを伝えるものだ。プレゼンテーションを聞いたユーザーがその説明通りにApple Storeの店頭で実際に製品を試してみれば、自分でもジョブズ氏がいっていたメリットを理解できる」

 スティーブ・ジョブスは“役者”でもあった:プレゼンテーションで振り返る“Apple=ジョブズ” (1/3) - ITmedia +D PC USER

何よりも様々な機能を羅列し「これ、凄いでしょう。こんなにいっぱい、いろんなことができるんです!」「他社よりもこんなにスペックが高いんです」といったことをアピールしがちなプロダクトの世界にあって、「楽しさ」「使いやすさ」「驚き」といった「体験」をアピールする。他のメーカーであれば、「このDAPは8GBです」とアピールするところを、ポケットから取り出し「このポケットに1000曲詰め込んで持ち出そう」とアピールする。ユーザーにとってどちらが魅力的だろう。

この相手に自分たちの「メッセージを伝える能力」の高さはなかなか真似できない。いったい何が違うのだろう。

まず何よりも、プレゼンターが1番の顧客になっていることが挙げられる。

Appleの製品が本当の意味でシンプルかというとそうではない。機能はいろいろあるし、UIにいたっては非常にシンプルに思えるが、裏側の処理はかなり複雑だ。ドラック&ドロップで曲の登録ができますというのは、利用者目線では非常に「わかりやすい」けれど、これを制御するシステム側は大変だ。UI上のどの部分にファイルが挿入されるかで処理が変わったり、登録できないファイルがドロップされた時の処理も必要になる。またユーザーの動作遷移が必ずしも1パターンではなくなることもある。複数のファイルを同時にドラックするものもいるだろうし、アプリケーションがタスクバー上に常駐した状態でドロップするかもしれない。

裏側の処理だけを考えるならば、「登録」ボタンがあって、「ファイルを開く」画面が開いて、その中で登録したい「ファイル」を選択する方がずっとシンプルだ。しかしそうした開発者側の視点ではなく、あくまで「顧客」側の視点でAppleの製品は考えられている。

そしてプレゼンについても、結局、顧客が1番「興味」「関心」「感動」を示す部分を分かっているからこそ、それをメッセージとして選択することができるのだろう。それは「機能」の説明ではなく、「体験」や「感動」の共感なのだ。

そしてそうした「メッセージ」をどのように効果的に伝えられるかを知っている。

言葉ではなく、ビジュアルで。イメージではなく、実体験として。

よく説明資料などを見ていると、全てを言葉で書き込もうとする人がいる。正しく伝えるために(あるいは誤解を招かないように)、後から資料を見返したときにもわかるように、全てを「文字」で記載しておくことがいいことだと。しかしそんな文字だらけの資料なんて、読むきにならないし、結果的に何を言いたいのか伝わらないことが多い。

書かれていることが正しいからといって、方法論として正しいわけではない。必要なことを絞り込み、それが伝わるようなシンプルなストーリー作りこそが大事なのだ。

そしてそのストーリーを伝えるためには、文字(論理・左脳)を最小限にビジュアル(感覚・右脳)を使い、可能な限り印象に焼き付ける。さらにイメージ画像ではなく、リアリティのある状態で、つまり実機を使い、あるいは衣服にまとい、プレゼンテーションの「プロパガンタ」などではなく誰もが「体験」できるものなのとして、伝えるのだ。

またジョブズの場合、その演出も秀逸だ。徹底した情報統制を一方では行いつつ、プレゼンに出てくる姿はみんなと同じようにジーンズをはき、気さくなあんちゃんといった風だ。そして語りかけ、さりげなくポケットからiPod nanoを取り出す。みんなこんな風にできるんだよでもいうように。


あぁ、書きたいことは他にもいろいろあるけれど、これ以上書くと言いたいことが散漫になってしまう。結局、Windowsに乗り換えたとはいえ、やっぱりAppleとジョブズの魅力からは逃れられないんです。はい。

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1 コメント

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Unknown (ガンガンガン速)
2011-09-03 02:58:52
こんにちわ
興味深い記事でした。
「、結局、顧客が1番「興味」「関心」「感動」を示す部分を分かっているからこそ」
にマーケティングを職とする私としては、勉強していかなきゃと思います。やはり、世界のアップル、リーダーは只者じゃありません。 
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