2~3年ほど前だろうか、ネットサービスの世界で「おもてなし」というコンセプトが流行ったことがある。湯川鶴章さんの「次世代マーケティングプラットフォーム」でもそのイメージを「三河屋さん」的サービスとして描かれている。
次世代マーケティングプラットフォーム 広告とマスメディアの地位を奪うもの / 湯川鶴章
![](http://www.sbcr.jp/img/t/4797348842_m.jpg)
三河屋さんとは「サザエさん」に出てくる出入りの酒屋さんのこと。定期的に磯野家に「御用聞き」を行っている。三河屋さんは磯野家のそれぞれの家族のことや台所に残っているお酒や醤油の状況などを普段の会話を通じて把握している。サザエさんも三河屋さんのことを信頼しており、必要に応じて届けてくれる商品を他の商店と比較することなく購入する。
この顧客との関係を1つの理想型と模して、ネットサービス上での「CRM」、「1to1(ワン・ツー・ワン)マーケティング」の構築をめざしたのが「おもてなし」というコンセプトだ。例えばgoogleで「醤油」と検索すれば、様々な商品が検索連動広告として表示される、あるいはamazonで書籍を購入すれば、それに関連する書籍や同じ書籍の購入者が興味を持っている商品をレコメンドしてくれる。グルーポンでは興味のある商品の特化セール情報を配信してくれる。
ユーザーが求めているであろう情報を先回りして提供し、必要であろう商品やサービスを紹介し、あるいは補充してくれる。テクノロジーを活用して、「三河屋さん」的サービスを提供すること、それがネット時代の「おもてなし」だ。
こんなことを思い出したのはこの記事を読んだから。
あきらめない、醤油店主の意地:日経ビジネスオンライン
岩手県陸前高田市の老舗醤油店 八木澤商店も今回の大津波で3階建ての工場を残してすっかりなくなったとのこと。高台に避難し、1人の従業員が行方不明になったがそのほかの従業員と家族は助かったという。
当然ながら工場の再建のめどがすぐに立つわけではない。そこで生き残った人々は、避難所を回り、救援物資の要望を聞き、足りない物を送り届けるという活動をはじめた。救援物資の「ご用聞き」だ。
「不思議なもんで、避難所に物資を届けると、『どこどこには何々が足りない』という情報が入る。それで、必要な物資をその避難所に持っていく。その繰り返しですね」
とは、物資の配送を取り仕切る9代目の通洋氏の言葉。震災直後、救援物資が全国から届きながらそれが実際に避難所まで届かなかったことの原因の1つに、集積所から先の小規模な避難所までの配送手段、人手が不足していたことがあげられるが、地場に密着した八木澤商店では、神社や小規模な避難所、避難所登録されていないような拠点などをへの配送を実現した。リアルな店舗だからこそできた「御用聞き」。
果たしてネット世界の「おもてなし」の精神はこの震災で何ができただろう。
広い意味では「伝言ダイヤル」や「WEB伝言板(WEB171)」のようなサービスはある。gooでは避難所からのメッセージを検索しやすくしているし、googleでは消息情報を検索できる「Person Finder」を提供したりもした。gooでは「全国放射線量マップ」が提供されたり、 googleでは「Crisis Response 避難所情報」が提供されたりしている。
しかし今回の震災でなんといっても注目を集めたのはTwitterやSNS、ブログといったソーシャルメディアだろう。多少、乱暴な切り口で言うならば、今回の震災で存在感を現したネットサービスは「個人」の結びつきが中心のサービスばかりだ。もちろんネットサービス事業者がそのPFを提供しているとはいえ、主人公はあくまでそれをどのように活用できるかを考えた「個人」だ。
もちろん考え方として、ネット事業者はあくまでPFを強化・安定化させてくれるだけでいい、どのように活用するかはユーザーが考えるからというのはある。しかしそれでは寂しすぎないか。自らのビジネス機会を増やすために様々なテクノロジーを開発し、「おもてなし」だといったコンセプトを作ってきたのに、こうした状況でそうしたテクノロジーが活かされないのだとしたらそれは寂しすぎる。
情報発信機能としてソーシャルメディアがあったとしても、そうした情報をもっと効率的/効果的に整理し、届ける方法はポータルサイトやネット事業者が提供できるのではないか。現地で活動している人々を支援することで、本当に被災地で必要としている物や情報を全国に届けるような仕組みができたのではないか。そうしたサービスがあったのだとしても、今回の震災ではTwitterの影にかくれて存在感はなかったように思う。
こうした状況下でどのようにネットのテクノロジーを活かせるか、それはポータルサイトなどネット事業者にとっての宿題なのだろう。
次世代マーケティングプラットフォーム 広告とマスメディアの地位を奪うもの / 湯川鶴章
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避難所からのメッセージ
Google Person Finder (消息情報): 2011 東日本大震災
全国放射線量マップ - goo
東日本大震災 - 避難所情報
次世代マーケティングプラットフォーム 広告とマスメディアの地位を奪うもの / 湯川鶴章
![](http://www.sbcr.jp/img/t/4797348842_m.jpg)
三河屋さんとは「サザエさん」に出てくる出入りの酒屋さんのこと。定期的に磯野家に「御用聞き」を行っている。三河屋さんは磯野家のそれぞれの家族のことや台所に残っているお酒や醤油の状況などを普段の会話を通じて把握している。サザエさんも三河屋さんのことを信頼しており、必要に応じて届けてくれる商品を他の商店と比較することなく購入する。
この顧客との関係を1つの理想型と模して、ネットサービス上での「CRM」、「1to1(ワン・ツー・ワン)マーケティング」の構築をめざしたのが「おもてなし」というコンセプトだ。例えばgoogleで「醤油」と検索すれば、様々な商品が検索連動広告として表示される、あるいはamazonで書籍を購入すれば、それに関連する書籍や同じ書籍の購入者が興味を持っている商品をレコメンドしてくれる。グルーポンでは興味のある商品の特化セール情報を配信してくれる。
ユーザーが求めているであろう情報を先回りして提供し、必要であろう商品やサービスを紹介し、あるいは補充してくれる。テクノロジーを活用して、「三河屋さん」的サービスを提供すること、それがネット時代の「おもてなし」だ。
こんなことを思い出したのはこの記事を読んだから。
あきらめない、醤油店主の意地:日経ビジネスオンライン
岩手県陸前高田市の老舗醤油店 八木澤商店も今回の大津波で3階建ての工場を残してすっかりなくなったとのこと。高台に避難し、1人の従業員が行方不明になったがそのほかの従業員と家族は助かったという。
当然ながら工場の再建のめどがすぐに立つわけではない。そこで生き残った人々は、避難所を回り、救援物資の要望を聞き、足りない物を送り届けるという活動をはじめた。救援物資の「ご用聞き」だ。
「不思議なもんで、避難所に物資を届けると、『どこどこには何々が足りない』という情報が入る。それで、必要な物資をその避難所に持っていく。その繰り返しですね」
とは、物資の配送を取り仕切る9代目の通洋氏の言葉。震災直後、救援物資が全国から届きながらそれが実際に避難所まで届かなかったことの原因の1つに、集積所から先の小規模な避難所までの配送手段、人手が不足していたことがあげられるが、地場に密着した八木澤商店では、神社や小規模な避難所、避難所登録されていないような拠点などをへの配送を実現した。リアルな店舗だからこそできた「御用聞き」。
果たしてネット世界の「おもてなし」の精神はこの震災で何ができただろう。
広い意味では「伝言ダイヤル」や「WEB伝言板(WEB171)」のようなサービスはある。gooでは避難所からのメッセージを検索しやすくしているし、googleでは消息情報を検索できる「Person Finder」を提供したりもした。gooでは「全国放射線量マップ」が提供されたり、 googleでは「Crisis Response 避難所情報」が提供されたりしている。
しかし今回の震災でなんといっても注目を集めたのはTwitterやSNS、ブログといったソーシャルメディアだろう。多少、乱暴な切り口で言うならば、今回の震災で存在感を現したネットサービスは「個人」の結びつきが中心のサービスばかりだ。もちろんネットサービス事業者がそのPFを提供しているとはいえ、主人公はあくまでそれをどのように活用できるかを考えた「個人」だ。
もちろん考え方として、ネット事業者はあくまでPFを強化・安定化させてくれるだけでいい、どのように活用するかはユーザーが考えるからというのはある。しかしそれでは寂しすぎないか。自らのビジネス機会を増やすために様々なテクノロジーを開発し、「おもてなし」だといったコンセプトを作ってきたのに、こうした状況でそうしたテクノロジーが活かされないのだとしたらそれは寂しすぎる。
情報発信機能としてソーシャルメディアがあったとしても、そうした情報をもっと効率的/効果的に整理し、届ける方法はポータルサイトやネット事業者が提供できるのではないか。現地で活動している人々を支援することで、本当に被災地で必要としている物や情報を全国に届けるような仕組みができたのではないか。そうしたサービスがあったのだとしても、今回の震災ではTwitterの影にかくれて存在感はなかったように思う。
こうした状況下でどのようにネットのテクノロジーを活かせるか、それはポータルサイトなどネット事業者にとっての宿題なのだろう。
次世代マーケティングプラットフォーム 広告とマスメディアの地位を奪うもの / 湯川鶴章
![](http://www.sbcr.jp/img/t/4797348842_m.jpg)
避難所からのメッセージ
Google Person Finder (消息情報): 2011 東日本大震災
全国放射線量マップ - goo
東日本大震災 - 避難所情報
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