こんな難しいタイトルをつけて、何が書けるのか・・・
これはちょっとした挑戦ですネ(>_<)
まずは良い音といっても、数々の・・・それこそ星の数ほどもあろうかと思う様な曲・・・
その一曲の中にも、やさしい音、激しい音、冷たく透き通るような音・・・
書いていたらきりがないほど、たくさんの音がありますし、また要求もされます。
わかりやすく言えば、多くの絵画のように多彩な色合いやタッチがあり、
また時代や、画家の個性や作品によってもによっても、それがまったく異なるように、
音にも非常に多くの表現があるということです。
音楽との関係を比較してみると、はるかに絵画や彫刻など、美術の世界のほうが先んじています。
音楽の世界は、その後を追うように影響を受けながら、ついて行っているように思います。
平面的な宗教画が描かれていた時代から、遠近法が確立されたり、その描かれた素材がわかるほど
リアリズムを追求した時代、装飾的な美しさがもてはやされた時代、ドラマティックな表現を追求した時代、
目に映る形だけでなく、光や立体的な視点を追求した時代、まだまだ進化は続いていきます。
多分皆さんは、近代絵画などは、近代あるいは現代音楽のように、
解りずらいと思っているかたも多いのではないかと思います。
でも、そういう音楽は知らず知らずのうちに耳にしているのです。
サスペンスドラマや映画の音楽や効果音、またはSF映画など、画像に釘付けになって
気が付かずにいることもあるかも知れませんが、映像にぴったりと合った音楽や効果音。
一度目を閉じて、音楽だけに集中してみてください。
ハッとするような音や、音楽が聴こえてくると思います。
なんだか本題と離れた話になってしまったようにも思えますが、やはり音を追求する上で、
絵画や映像、また物語や小説など、あらゆる想像力をかき立てるものに触れることは
とても大事なことだと思います。
また、ピアノを勉強する意味で、ついついピアノ曲ばかりを多く聴きがちですが、やはり
オーケストラや室内楽、声楽、いろいろな楽器のアンサンブルやソロ演奏など、どんな音を
いま自分が出したいと要求しているのかを知る上でも、普段から楽しんで聴くことは
大切だと思います。
想像力はとても大切な、表現意欲の源です。
しかし、それだけではよい音は簡単に出せません。
バレリーナや、体操選手、スケート選手を始め、あらゆるスポーツ選手のように
しなやかで強い手や体も必要なのです。
いつもレッスンの初めに行う指あるいは体の柔軟体操など、時には本題の曲より時間を費やすこともありますが、
柔軟な体と、しなやかでしっかりした手、指は、表現手段として必要です。
マリンバ奏者が一種類のマレットしか持っていないとしたら表現はかなり制約されるでしょう。
それと同じように、いろいろな音を出せるための手を作ることは必要だと思います。
しかしまた、それ以上にそれを聞きとる耳と想像力が大切なのです。
ピアノを弾く時、ついつい打鍵の音に意識が集まりがちですが、打鍵した後の響き、
あるいは音の揺れ、波長を聴くことはおろそかになっていませんか?
また、打鍵だけでなく指を離すときの離鍵も、同じように気を使ってほしいところです。
ですから、指を早く動かすことに一生懸命にならず、一音によく耳を傾けることは
非常に大切だと思います。
普段のレッスンでもしばしば言うことですが、楽譜は演劇の台本のようなものだと思います。
どのような語り口でセリフを言うかは、役者によっても異なります。
それが個性であり表現意欲の問題であり、それぞれの解釈の仕方だと思います。
小さい生徒さんには、音楽の言葉だから、フレーズを大切にして、どんなふうにお話しするのか聞くこともあります。
また、音楽の基本は歌ですから、どんなふうに弾きたいか迷ったらぜひ歌ってみてください。
結局はピアノを通し、ヴァイオリン、フルート、あらゆる楽器を通し歌っているのです。
さあ皆さん、どんな声、響きで歌ったり、お話したりしますか?
私たちは頭を使い、想像力を使い、体のあらゆることを使い、つまり全身を使い、
ピアノを弾いているのです。
どんな音が出したいのか、良い耳と、豊かな想像力をもって追求してみてください。
ちょっと難しい話になってしまいましたが、どんな色で皆さんが絵を書いてくれるのか・・・
それがピアノの音で表現されることを楽しみにしています。
もちろん私もまだまだ修行の半ば・・・
皆さんと悩みながらも、楽しく追求していけたらと思います。
こういうのを、遠藤周作さんは、「くるたのしい」と言ったそうですよ!
さて、肝心のよい音とは・・・?
これまで長々と書いてきましたが、皆さんの体験したことや、学んだこと、
努力して得たもの・・・あらゆることが肥やしとなって、心から紡ぎだされる音、音楽が、
人の心も揺さぶる素晴らしい音になるのではないかと思います。