一つ目は、言葉を獲得することについてである。自助グループにおける語りは、必ず「私」を主語としている。そして自分がかつてどうであったか、現在はどうかを中心に語っていく。
「他人ではなく自分の棚卸し」をするのである。
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しかし、語られた言葉の意味を理解できず、「そのうちわかるよ」と言われても疎外感を抱き、また聞くことと話すことがとにかく疲れてしまう、あるいは苦痛だという依存症者は確実に増えている。
当事者研究の手法は「聞き合う」ことを中心としている。
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「自分自身で、共に」
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はじめから言葉を明確にできなくても、あるいは感覚のようなものでしかなくても、質問という形で、その人の困りごとはグループのなかで次第に形を成し、かつ他のメンバーからも同じような体験や困りごとの披露が始まると、それは「私」から出発しながらも「私たち」のものとなっていく。