NECエレクトロニクスは、2007年のPFC(温室効果ガス)の排出量を前年比21%削減することに成功したことを2008年6月23日に発表しました。これは同社の過去最大の排出量となった2004年から30%削減したことになるとのことです。
今回同社が削減に成功したのは、温室効果ガスの一種類であるパーフルオロカーボン(PFC:Perfluorocarbon 注1)の排出量で、2007年は2006年の80%にあたる76万トン-CO2(注2)となりました。PFCとは炭化水素(C-H)の水素(H)をすべてフッ素(F)で置き換えた化学物質。今回のPFC排出量の削減は主として、
(1)効率的PFCの使用条件を考案することにより成膜工程におけるPFC使用量を削減したこと
(2)代替ガスの研究および採用を促進したこと
などの効果によるものです。
さらに同社は、
(3)2007年度および2008年度にかけて、PFCを分解する専用除害装置を生産ラインへ導入すること
により、2008年以降の排出量のさらなる削減を目指すとのことです。
同社は、2010年までにPFCの排出量を1995年の52万9千 トン-CO2の90%、すなわち47万6千 トン-CO2以下まで低減するという目標を掲げていますが、今回の施策により、目標を上積みする可能性が見えてきました。
地球温暖化を促進する温室効果ガスとして、石油や石炭などの化石燃料の燃焼により発生する二酸化炭素(CO2)を初めとする様々なガスの排出が注目を集める中、2005年に発効した京都議定書では、温室効果ガスとしてCO2以外にも、牛の消化や稲作の過程で発生するメタンガス(CH4)や畜産の排泄物や農用地の土壌に含まれる亜酸化窒素(N2O)、冷媒であり代替フロンと呼ばれるハイドロフルオロカーボン(HFC)などが指定されています。
そして半導体などの生産過程に使用されるPFCも、温室効果ガスに指定されていますが、PFCの排出割合は、温室効果ガス全体の2%程度しかないため、広く一般に知られていない状況です。
しかしながらPFCは、CO2と比較して地球温暖化係数が5000倍から12000倍と高く、つまりより環境負荷が大きいガスであるため、これらの削減が温暖化防止のために効果的であるという認識が広がりつつあります。
半導体生産は大きくシリコンウエハに電気回路を形成する拡散工程とシリコンチップをパッケージに封入する組立工程があります。PFCが使われるのは、その拡散工程のうちシリコンウエハ表面に絶縁膜や金属膜などの薄い膜をつくる「成膜」および、その絶縁膜や金属膜を彫ったり、削り取ったりする「エッチング」と呼ばれる工程です。成膜方法としてはCVD(Chemical Vapor Deposition)という方法が広く用いられておりますが、CVDでは基板表面にプラズマを発生させて膜を作る際に製造装置に原材料のカスが付着してしまいその原材料のカスを分解し、取り除くためにPFCを使用します。また、エッチングではエッチングの材料ガスとしてPFCを使用します。PFCは製造装置内で炭素(C)とフッ素(F)に分解されますが、このフッ素が半導体の絶縁膜や金属膜と良く反応するため、PFCは半導体の生産に欠かせない化学物質とされているとのことです。
半導体業界では世界半導体会議(WSC:World Semiconductor Council)にて1999年4月に「2010年までにPFCなどの排出量を1995年の90%以下に削減する」という目標を定め、各社がこの目標達成に取り組んでいます。
同社は1997年、当時のNEC半導体事業グループのグループ横断組織として、PFCの使用動向や使用結果の分析などを行なうPFC対策部会を設置し、削減に向けた取り組みを強化しました。そして、WSCと同時に2010年までに1995年の90%まで削減するという目標を設定し、削減活動を推進してきました。しかしながら、生産量の拡大とともに排出量も増大の一途をたどり、2004年には1995年の排出量の2倍以上となる100万トン-CO2を超えるPFCを排出する結果となってしまいました。このような状況を受け、同社は生産量が増大しても排出量の削減を実現する策を本格的に検討してきましたが、今回様々な施策によりPFCの排出量を大幅に削減することに成功したものです。
施策は次の通り
(1)PFC使用量の削減
成膜時に発生する原材料のカスを取り除くために使用するPFC使用量が最少となるよう、PFC使用条件の改良を重ねてきた。その結果、最大従来の40%程度使用量を削減することに成功した。これらの実験結果を各生産拠点に展開することによりPFCの使用量を削減する。
(2)代替ガスの導入
同社は生産過程において主としてC2F6を使用していた。C2F6の地球温暖化係数は、11900。これに代わり地球温暖化係数が8600のC3F8に転換している。
(3)PFCを分解する専用の除害装置を生産ラインに導入
PFC除害装置は燃焼方式、ヒーター方式、触媒方式などの方法があるが、当社は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、燃焼方式のPFC除害装置の導入を推進している。2007年度NECセミコンダクターズ九州・山口の山口工場およびNECセミコンダクターズ関西のそれぞれ6インチラインに、あわせて6台の設備を導入し、本年から本格的な稼働を開始させている。また、2008年度にはNECセミコンダクターズ九州・山口の熊本川尻工場およびにNEC関西のそれぞれ8インチラインに装置を導入する予定。
同社は今後、これらの策を推進することで2010年までにPFCの排出量を1995年の52万9千トン-CO2の90%、すなわち47万6千 トン-CO2以下まで低減するという目標を確実に達成するとともに、ポスト-2010年の削減活動も視野に入れ、削減量の上積みを行うべく、活動を展開するとのことです。
なおNECエレクトロニクスは、2008年6月23日から同26日にかけて北海道札幌市で行なわれる半導体国際環境学会(主催:社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)半導体部会)で温室効果ガス削減への取り組みに関して「About our difficult challenge to adopting the abatement system for existing lines(既存ラインへの温室効果ガス削減への挑戦)」というタイトルで講演を行ないます。
注1 パーフルオロカーボン(PFC:Perfluorocarbon)
PFCとは炭化水素(C-H)の水素(H)をすべてフッ素(F)で置き換えた化学物質。CO2と比較して地球温暖化係数が5000倍から12000倍と高い。
注2 トン-CO2
温室効果ガスの排出をCO2換算した単位。気候変動に関する政府間パネルで決められた算出方法を採用。CO2と比較した温室効果の強さである地球温暖化係数(Global Warming Potential)に待機放出量を乗じたもの。
今回同社が削減に成功したのは、温室効果ガスの一種類であるパーフルオロカーボン(PFC:Perfluorocarbon 注1)の排出量で、2007年は2006年の80%にあたる76万トン-CO2(注2)となりました。PFCとは炭化水素(C-H)の水素(H)をすべてフッ素(F)で置き換えた化学物質。今回のPFC排出量の削減は主として、
(1)効率的PFCの使用条件を考案することにより成膜工程におけるPFC使用量を削減したこと
(2)代替ガスの研究および採用を促進したこと
などの効果によるものです。
さらに同社は、
(3)2007年度および2008年度にかけて、PFCを分解する専用除害装置を生産ラインへ導入すること
により、2008年以降の排出量のさらなる削減を目指すとのことです。
同社は、2010年までにPFCの排出量を1995年の52万9千 トン-CO2の90%、すなわち47万6千 トン-CO2以下まで低減するという目標を掲げていますが、今回の施策により、目標を上積みする可能性が見えてきました。
地球温暖化を促進する温室効果ガスとして、石油や石炭などの化石燃料の燃焼により発生する二酸化炭素(CO2)を初めとする様々なガスの排出が注目を集める中、2005年に発効した京都議定書では、温室効果ガスとしてCO2以外にも、牛の消化や稲作の過程で発生するメタンガス(CH4)や畜産の排泄物や農用地の土壌に含まれる亜酸化窒素(N2O)、冷媒であり代替フロンと呼ばれるハイドロフルオロカーボン(HFC)などが指定されています。
そして半導体などの生産過程に使用されるPFCも、温室効果ガスに指定されていますが、PFCの排出割合は、温室効果ガス全体の2%程度しかないため、広く一般に知られていない状況です。
しかしながらPFCは、CO2と比較して地球温暖化係数が5000倍から12000倍と高く、つまりより環境負荷が大きいガスであるため、これらの削減が温暖化防止のために効果的であるという認識が広がりつつあります。
半導体生産は大きくシリコンウエハに電気回路を形成する拡散工程とシリコンチップをパッケージに封入する組立工程があります。PFCが使われるのは、その拡散工程のうちシリコンウエハ表面に絶縁膜や金属膜などの薄い膜をつくる「成膜」および、その絶縁膜や金属膜を彫ったり、削り取ったりする「エッチング」と呼ばれる工程です。成膜方法としてはCVD(Chemical Vapor Deposition)という方法が広く用いられておりますが、CVDでは基板表面にプラズマを発生させて膜を作る際に製造装置に原材料のカスが付着してしまいその原材料のカスを分解し、取り除くためにPFCを使用します。また、エッチングではエッチングの材料ガスとしてPFCを使用します。PFCは製造装置内で炭素(C)とフッ素(F)に分解されますが、このフッ素が半導体の絶縁膜や金属膜と良く反応するため、PFCは半導体の生産に欠かせない化学物質とされているとのことです。
半導体業界では世界半導体会議(WSC:World Semiconductor Council)にて1999年4月に「2010年までにPFCなどの排出量を1995年の90%以下に削減する」という目標を定め、各社がこの目標達成に取り組んでいます。
同社は1997年、当時のNEC半導体事業グループのグループ横断組織として、PFCの使用動向や使用結果の分析などを行なうPFC対策部会を設置し、削減に向けた取り組みを強化しました。そして、WSCと同時に2010年までに1995年の90%まで削減するという目標を設定し、削減活動を推進してきました。しかしながら、生産量の拡大とともに排出量も増大の一途をたどり、2004年には1995年の排出量の2倍以上となる100万トン-CO2を超えるPFCを排出する結果となってしまいました。このような状況を受け、同社は生産量が増大しても排出量の削減を実現する策を本格的に検討してきましたが、今回様々な施策によりPFCの排出量を大幅に削減することに成功したものです。
施策は次の通り
(1)PFC使用量の削減
成膜時に発生する原材料のカスを取り除くために使用するPFC使用量が最少となるよう、PFC使用条件の改良を重ねてきた。その結果、最大従来の40%程度使用量を削減することに成功した。これらの実験結果を各生産拠点に展開することによりPFCの使用量を削減する。
(2)代替ガスの導入
同社は生産過程において主としてC2F6を使用していた。C2F6の地球温暖化係数は、11900。これに代わり地球温暖化係数が8600のC3F8に転換している。
(3)PFCを分解する専用の除害装置を生産ラインに導入
PFC除害装置は燃焼方式、ヒーター方式、触媒方式などの方法があるが、当社は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、燃焼方式のPFC除害装置の導入を推進している。2007年度NECセミコンダクターズ九州・山口の山口工場およびNECセミコンダクターズ関西のそれぞれ6インチラインに、あわせて6台の設備を導入し、本年から本格的な稼働を開始させている。また、2008年度にはNECセミコンダクターズ九州・山口の熊本川尻工場およびにNEC関西のそれぞれ8インチラインに装置を導入する予定。
同社は今後、これらの策を推進することで2010年までにPFCの排出量を1995年の52万9千トン-CO2の90%、すなわち47万6千 トン-CO2以下まで低減するという目標を確実に達成するとともに、ポスト-2010年の削減活動も視野に入れ、削減量の上積みを行うべく、活動を展開するとのことです。
なおNECエレクトロニクスは、2008年6月23日から同26日にかけて北海道札幌市で行なわれる半導体国際環境学会(主催:社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)半導体部会)で温室効果ガス削減への取り組みに関して「About our difficult challenge to adopting the abatement system for existing lines(既存ラインへの温室効果ガス削減への挑戦)」というタイトルで講演を行ないます。
注1 パーフルオロカーボン(PFC:Perfluorocarbon)
PFCとは炭化水素(C-H)の水素(H)をすべてフッ素(F)で置き換えた化学物質。CO2と比較して地球温暖化係数が5000倍から12000倍と高い。
注2 トン-CO2
温室効果ガスの排出をCO2換算した単位。気候変動に関する政府間パネルで決められた算出方法を採用。CO2と比較した温室効果の強さである地球温暖化係数(Global Warming Potential)に待機放出量を乗じたもの。