百合とオレンヂ城Ⅱ

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赤い影法師 その1

2006-04-21 20:22:26 | 歴史小説
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 三大忍者小説その1の巻【赤い影法師】
 原作は眠り狂四郎や御家人斬九郎の柴田錬三郎
先生です。
 まず赤い影法師を読む前に知っておいて欲しい
お約束があります。
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1 石田三成には「影」「鴉」という忍びがいる

 冒頭関ヶ原の石田三成と「影」「鴉」の説明が
あります。
 赤い影法師は忍び「影」の暗闘の歴史ですが、
この設定は他の柴田錬三郎先生の作品でもたびたび
使われております。
 というか松本零士、マイケル・ムアコック、
CLAMPみたいに自分の作品を全てつなげたい
のでしょうw
 なお「鴉」の暗闘の歴史を知りたければ
「忍者からす」と「生死の門」という短編がありま
す。
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 2 秀頼、真田幸村は生きている
 
 はい!そこ!つっこまない。
柴田錬三郎先生の作品は、それはそれは壮大な
ストーリーです。
 そして史実とは違います。
「俺はこう思っているんだ」というオレ節です。
 名づけて司馬史観ならぬ柴史観ですw
 自分の好きな人物をあっちでもこっちでも出演
させます。
 赤い影法師にも由比正雪や水野十郎左兵衛門
がストーリーに関係なく出てきます(笑)
 今大河ドラマで少し有名な堀尾モンにも少し
触れているページもあります。
 たぶん大河でもやるシーンですので覚えておいて
ください。
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>君にーむーねきゅん♪きゅん♪
 赤い影法師のストーリーですが、
まず、冒頭
 関ヶ原の石田三成と「影」「鴉」の説明がある
のはすでに書きましたし、この設定が繰り返し
書かれるのも書きました。
 時は大阪の陣、
 服部半蔵は真田傘下の忍び「風盗」の殲滅を
命じられました。
 いろいろあって「子影」という忍びと協力
し合うのですが、、、、、、、、。
 この「子影」実は「おなご」なのですが、
「子影」の設定は男では全然面白くないのです
が女性である場合キラキラと生きます。
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚
服部半蔵も「女子だったのか、そなたは――」
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚(ドキン♪)☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・
と胸キュン☆♪してしまうってモンです。
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*
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 時は更に流れ寛永十一年、
 はい、ようやく本筋です。
修羅の刻五・六巻でもやった「寛永の御前試合」です。
 史実ではあったとかないとか言われる
寛永の御前試合ですが柴田先生はここで
「巷説の方が記録よりも正しい」
と本文でも書いておりますが、ようするに
「ガタガタ細けぇ事をぬかすんじゃねぇ!」
でございますw
 
 二十数年の時が流れても服部半蔵はあいかわらず
子影を思い慕っていますし(随分純情ですw) 
 子影は母親の「母影」となり、その子には
「若影」と名づけました。
 この二人おもいっきり妖しいのです。
不忍池の祠(ほこら)で「母影」は「若影」の体
に油を塗って楽しんでいます(治療ですが)
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆♪☆゚・*:.。.☆゚・*:.。.☆☆.。.:*・
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆♪☆゚・*:.。.☆゚・*:.。.☆☆.。.:*・
「ああん、ママン、良いっ良いよ」
「ふふふ若影ちゃんたらカワイイ」
「くそう、あのおいぼれめ」
「若影ちゃん、あれは服部半蔵なのよ。
それより遠藤由利って子が気になるのね」
「ボ、ボクあの子には手出してないよ」
「いいわお母さんを対手として練習なさい」
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆♪☆゚・*:.。.☆゚・*:.。.☆☆.。.:*・
☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆♪☆゚・*:.。.☆゚・*:.。.☆☆.。.:*・
 この二人の関係はこんな感じです。 
当たらずとも遠からず、間違ってはいません。
 ちなみに私は不忍池というとこの二人を思い
出してしまいます。

☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚
 上の会話で出た遠藤由利さんですが、
美少女戦士です。☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆・゜☆.。.:*・゜
 黒髪、白装束美少年と見まがう妙齢の女性
です。☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*

そんな美少女戦士遠藤由利さんに春日の局と家光
の魔の手がせまる!!
 
  ※*※*※*※*※*※*※*※*※*※*※
  ※長くなりそうなので次回に続く※ 
  ※*※*※*※*※*※*※*※*※※※*※
 

PS・大菩薩峠&買った本

2006-04-19 22:50:36 | 歴史小説
 買った本
 村上元三「佐々木小次郎」川口松太郎「女人武蔵」
 
 
 村上元三は最近四月四日に訃報を聞きました。
96歳でした。
村上元三先生は昨年の大河ドラマ義経で資料提供
でクレジットされていましたが、山岡荘八先生
の盟友でもあります。
 山岡荘八先生といえば「徳川家康」や渡辺謙の
大河ドラマ原作「伊達正宗」が有名ですが、
伊達正宗の一巻あとがきで村上元三先生は
山岡先生との思いでを語っております。
 「山岡くんが徳川家康を書き始めた時私は佐々木
小次郎を書き始めていた」
 「どちらかが先に逝ったら残った方が葬儀委員長を
やると約束していた」体が衰弱してきた山岡先生に

 「約束を守るのはイヤだよ」

 と村上先生は言いました。
二人の友情を感じたり、またこういう人がまだ生きて
いたんだなぁ、とか思いました。
 あの世でまた仲良くしてください。

村上先生の代表作は「次郎長三国志」「松平長七郎」
などがあります。
 TVでは「佐々木小次郎」が代表作と出ていたので
探したら案外はやく見つかりました。
 
>川口松太郎「女人武蔵」
 前は佐々木小次郎、こちらも偶然武蔵です。
 川口松太郎とは?
探検家川口ひろし氏の父上です。
 「女人武蔵」は秀次の遺児・由加と千加
二人の女性の数奇な運命を描いた作品
だそうです。
 解説を有吉佐和子先生が書いているのです
が少し共通点があります。
 川口松太郎先生も有吉佐和子先生も皇女和宮
を題材とした小説を書いています。
 それから有吉佐和子といえば最近
「出雲の阿国」がNHKでドラマ化され
ましたが、
村上元三「佐々木小次郎」
川口松太郎「女人武蔵」にも
出雲の阿国は重要な役で出るそうです。
 あと川口松太郎先生はミスユニバースの審査員
を務めた程の人だそうで、女性の書き方は上手
そうですね。
 (時代小説には稀有な女性が出てくるとか)
 
 
 あと解説に宮本武蔵は二人いたそうで、
「武蔵政名」と「武蔵玄信」の両名がいたそうです。
 五味康祐先生の「二人の武蔵」はこの説の線を採用
してるそうなんですが。
 ちなみに二人の武蔵は持ってます。
でもまだつん読状態ですw


>「大菩薩峠」で解説を書いた志茂田景樹
 大菩薩、一度読んだが二度目はまだない。
とばして読んだページもある。
 山が好き(マタギとか書きましたもんね)
 小さい時、多摩で育ったので近藤、土方は先輩
と思っていて、よく映画や小説も読んだ。
 豪放で陰険さがなく甘い芹沢鴨が好きで
絶対にないのだが机龍之助の立場で読んで、
芹沢鴨に死んでほしくない、とハラハラした。

 志茂田先生ってば、純情。
 


>林不忘(丹下左膳の作者)へのメッセージ

>松本清張
 ユニークな存在だろう

>石原慎太郎
林不忘、牧逸馬、林譲次の三つの名前を持つ
彼のセンスはポストモダニズムであり
真のエンターテイメントである

よくわかりませんが先を読んでる文章の
ような気がしますw

アーサー王宮廷物語

2006-04-19 21:42:00 | 歴史小説
 ひかわ玲子先生のサイト「ラヴェンダーガーデン」
でひかわ先生がアーサー王三部作について語りました。
 アーサー王伝説を書くきっかけとなったのは 
アーサー王研究の第一人者高宮利行先生
(キングアーサーにも寄稿した先生)との対談
だそうです。
 ところで高宮先生曰くですが
「日本人でアーサー王を書いたのは夏目漱石だけ」
 ええっ、マジですか?
 
 
 ひかわ先生は二十代の半ばに、最初にイングランド
に行き、アーサー王伝説に最初に登場する地──
コーンウォルのティンタジェル城址
 等等アーサー王伝説ゆかりの地を訪れたりしまし
た。リサーチも完璧です。


>印象に残った文章を引用
 円卓、というのは、不思議な象徴だな、と思います。今も、ヨーロッパで、仲裁者が入って和平のために同じテーブルについて話し合うことを、円卓会議、と呼んだりします。今の国連は必ず丸いテーブル、円卓について話し合われますし。アーサー王伝説には、邪悪で強大な敵、というものがありません。利害関係が対立しますが、皆、それぞれの立場において「正しい」人たちばかりです。そういう意味では、アーサー王宮廷キャメロットの状況は、すごく今日的状況だと言えます。そして、彼らは最後に滅びたわけですが、わたしたちはどうなるのでしょうか……?
 
 
 滅びたくはないですが、神話にはその国独自の
価値観が色濃くでますよね。
 円卓においての話合いは素晴らしいシステムです
円卓の騎士には序列とかない、のでしょうか?
中国だと水滸伝とかで席順の譲り合いとかよく
していますね。
 日本だと神様がわらわらと八百万w
 国によっていろいろです。
 確かに巨大な敵はいません。それぞれの正しい
立場の者同士が話あったり対立(?)をしたり
しています。
 白か黒かではなく灰色のグレーゾーンで
ストーリーが進むのが自分的には好きです。



>更に素晴らしいのでまた引用します
>私のモルガン・ル・フェイではなくル・フェなんですね
の質問に対する先生の答。

モーゲン・ル・フェが、フェイ、でないかどうか、ということですが、この「フェ」は、Fey、と英語だと表記されます。なので、英語で読めば、「フェイ」なのですが、この言葉はフランス語起源なのです。フランス語読みすると、フランス語では最後のyは子音でサイレント(発音しない語)になり、フェ、になります。イギリスの物語なので、フェイ、と読んでも構わないのですが、一般的には、フェ、と呼ばれるようです。アーサー王伝説には、この、モーゲン・ル・フェと同じように、湖の貴婦人、ダム・ド・ラックとか、喜びの砦、ジョイアス・ガードのように、フランス語の名前が多く出てきます。それは、中世後期になるまで、イギリスでの公用語にはフランス語が使われていた関係とか、かつてのさまざまな伝説が、イギリスの対岸であるフランス語圏と文化圏を同じにしてともに語られてきたりした事情があります。アーサー王伝説の主要人物であるサー・ランスロットの国、ベニック(Benwich)も、フランスにある国ですしね。ハドリアヌスの城壁は、今回の、わたしの「アーサー王宮廷物語」の地図には記載されませんが、第三巻の主要な舞台となる、伝説の中でのカーライルとジョイアス・ガード(喜びの砦)の位置というのは、ハドリアヌスの城壁と綿密な関係を持っていたとされ、カーライル城は、ハドリアヌス城壁のほぼ西端、ジョイアス・ガードはハドリアヌスの城壁の、ほぼ東端にあります。

 引用すいませんあと長いです。 

「丹下左膳」林不忘 一巻 「乾雲坤竜」の巻

2006-04-07 20:15:54 | 歴史小説
 >シェーは丹下、名は左膳
 最近中村獅童や豊川悦司でリメイクもされた作品
「丹下左膳」です。
コ-ピオンキング、キャットウーマン、
エレクトラ、ふくちゃん、トルネコ、
など敵もしくは副主人公格のキャラが主役になるのを
スピンオフと言います。
 丹下左膳も元々は「新版大岡政談」の登場人物の
一人でしかありませんでしたが片目片腕、白装束に
どくろの紋、女物の長じゅばんという怪異な恰好
がウケたのかめでたくスピンオフし主役の座
をゲットしました。
 作者の林不忘は新潟の佐渡生まれという、もしか
しなくても何かありそうな感じのする土地です。
 新潟といえば「ついでにとんちんかん」の
えんどコイチ先生もそうですが、
「腕が五本、目が三つ、足が四本、頭が三つ
これな~んだ?」というクイズに
「答えは二匹のからかさお化けを連れた丹下左膳」
という答えのギャグがありました。
 だから、どうしたw

 実は丹下左膳は新版大岡政談を含めて二本しか
話がありません。
 二本目の「こけ猿の壷」がトヨエツでリメイク
され幻の殺陣のシーンも復活したとか。
 「こけ猿の壷」はひとまず置いときまして、
 一本目が「乾雲坤竜」の巻、なんですが、
ストーリーはある町道場に伝わる二本の刀・乾雲丸
と坤竜丸を巡ってさまざまな人間たちが入り
乱れる、、なんですが、、、、、、、、、。
 はっきり言いますが面白いんですが登場人物や
ヒロインや女性の扱いがかなり不満です。
 
 まず一見すると正義の剣士っぽい一応(?)
主人公の諏訪栄三郎からしてちょっと
好かない人物。
 二本の刀の持主・小野塚鉄斎の娘・弥生の
婚約者なんですが意中には別の好きな女性、
お艶がいて弥生にはどこか冷たい態度しか
取りません。
 そして、駆け落ち同然に暮らし始めたお艶
とも愛が冷めて醜い痴話ゲンカをしたり、
しかも、例えるなら良い子ぶろうとする
みたいなところがあり、未練タラタラぶり
と優柔不断なとこが本当にイラつく
人です。
 こういう悪に徹する事も善人になる強さもない
人はうっとおしいものです。
 ギャルゲーの主人公にいるタイプです。

 
 丹下左膳にしても刀を取ってこい、と刀マニア
の主君(こいつが全ての元凶)に命じられて
来たのですが丹下は人を斬るのを楽しんでおり
(辻斬りもする)ほとんど殺人鬼なのでみてて
気分悪いです。
 それでも不満でも読むのは不快を上回る魅力が
あるからです。
 例えば二本と書いて「りゃん」とルビをふる
ような美しい日本語の古語を堪能できます。
 
 あと作者の林不望と同じ東北生まれの
藤沢周平と同じ「しっぽり濡れる」みたいな
東北の雰囲気も味わえます。
 某人物が東北に行くと飯盛り女郎が出て来たり
して「ああ東北ですよ。吉田松陰くんも会った
なぁ」と感慨深くなります。
 丹下左膳はアメリカンが少し入っているのです
が、何故か弱い者には同情的(?)な東北精神が
ちゃんと含まれています。
 丹下左膳は何故か子供には甘いんですw
 メリケンジャップ。

 大岡政談なので大岡越前さまも出てきます。
 トヨエツ版で演じるのは西田敏行さんで西田さん
の徳川率さらに倍増です!
高速移動かご(ほとんどマシーンと化してるw)
でキ-ンキュイ-ンとマッハで移動し、
火事場装束を着て完全武装で登場です。
 
 でも女性の扱いでどうしても納得がいかない
シーンが二つ!
 ヒロイン弥生がクズ男に襲われている時、
ですが、普通、女が男に襲われていて近くを
人が通ったら助け求めるでしょう?
しかも大岡様の手下です。
 大岡部下が来て話をして帰った時弥生は
「あっ、助けをもとめるのを忘れていたわ」
(注そばにまだクズ男がいる)
ってありえねぇ!
 絶対ありえねぇ!おかしいでしょ!?
 
 最後ヒロイン弥生はかわいそうに死んでしま
うんですよ。
 ですが何がヒドイかって死ぬ必然性が全く
ないのと何故死んだのか全く説明がない、
んです。
 病気でも傷も負っていないし斬られた訳でも
ないんです。そういう描写一切なしです。
 それなのにです。最低です。
 
 丹下左膳の原作者林不忘は牧逸馬の名で
怪奇小説も書いていますが、編集が島田荘司
氏です。 
 某方と某方の会話で島田荘司は女性の描写
がアレ、と又聞きしましたが、、、、、。
 関係があるのでしょうか?
そこんとこ、どうなのでしょう?
 
 
 二巻、「こけ猿の壷」につづく
柳生が日光の工事請負で大変な目に。
(しかも歴史的事実)
 作者、林不忘は日本人には珍しいユーモアの
持主で二巻はその描写が秀逸です。

大菩薩峠(だいぼさつとうげ)

2006-04-04 20:27:51 | 歴史小説
 
 大菩薩峠の作者・中里介山によると大菩薩峠には
特定の主人公はいないそうでつまり、群像劇だ
そうですが、
「人間界の諸相を曲尽して大乗遊戯の境に参入
するカルマ曼荼羅の面影を大凡下の筆にうつし
見んとするにあり」
 と作者様はむずかしーい事を言うとります。
 要するに人いっぱい書いたよーいろいろ
するよー、です。(おい)
 
 大菩薩峠は宮沢健治と谷崎潤一郎がファン
だったそうです。
 
 >ストーリー
 時は幕末。
主人公の一人机龍之助が大菩薩峠で
一人の老巡礼を斬る場面から始まります。
大菩薩峠の由来が語られたり、猿の群れの
恐ろしさが伝奇風に語られます。 
 斬られた老巡礼の孫娘お松、そのお松を
支える義賊・七兵衛。
 机龍之助は剣客・宇津木文之丞を奉納試合
で殺し、その妻お浜を娶ったと思いきや
またも殺害。
 更に悪行を重ねる机龍之助。
そして、机龍之助を仇と狙う宇津木文之丞の
弟・兵馬。悪徳旗本・神尾主膳などなど他にも
様々な登場人物が出て壮大な群像劇を展開
します。
 
 かなり登場人物が多いので、書くのは
机龍之助ひとりに絞りますが
 机龍之助はかなり冷たい性格です。
 宿で心中しようとする人を見ても何も行動
しません。
まるっきりの悪党でもありませんし、心中で述懐
も葛藤もしますが冷とく突き放した感じです。
 いや、
そんな簡単な心中ではなく作者中里介山曰く
「大乗遊戯の境に参入するカルマ曼荼羅の面影」
でしょう。
 彼の複雑な内面を表している、かもしれません。 

 デスノ-トのライトみたいにわざとらしく
小悪党ぶる事がないだけ清いかも。

 机龍之助のモデルは元祖・音無しの剣の使い手
であった高柳又四郎だそうです。
 山田風太郎の指摘だったような。
 
 登場人物が多いという事は誰を主人公にして
見てもいいわけですし、そうすると様々な見方
解釈ができます。
 とにかく風雲児たち、みたいに大勢の人が
いろいろな場所で会い影響し合い分かれたり
また出会ったりします。
 個人的には祖父を斬られ、その後可哀相な
運命をたどるお松(それだけじゃないですが)
、そのお松を支えながら復讐の助けも
するしお松の為には盗みもする義賊・七兵衛、
あたりに次はスポットライトを当てて読み
たいです。
 

大菩薩峠の舞台は幕末なので新撰組もちろん
出てきます。
 新選組が清河の命をば狙い、
駕籠に近づいた、その時、中から出てきたは
なんと剣豪・島田虎之介!(勝海舟の剣の先生)
 はい、歴史的にはウソです。ですが山風は
「中里介山は知っててわざとやってるんだろう」
と武蔵野水滸伝で言っています。 
 こういうユーモアとか知識に裏付けられた
トンデモをわかるのはイキですね。
クソリアリズムだけが全てではないです。
山風、こういう作品等から色々学んだ、と
思います。
 
 でその新撰組ですが、
はっきり言って外道な集団です。
(机龍之助が入隊するくらいだから)
芹沢鴨が普通の悪党ですが鴨を暗殺する時
平助や沖田が鴨を闇討ち同然で暗殺しお梅さん
には「いい女だな」と言ったり蹴っ飛ばしたり
する最低の奴らになってます。

 山崎蒸クンも出てくるのですが、水戸の烈公・斉昭
の攘夷棒を装備しています(棒術使いですから)
 それに、登場人物紹介にも載っています。
 大菩薩峠にしろ吉川英治の「貝殻一平」に
しろ近藤以外で描かれる事のあまりない新撰組隊士
の中では結構優遇されているのではないでしょうか。


今までの感想は全て大菩薩峠の一巻の内容ですが
一巻はわりと新撰組が出てきまして、
他に「壬生と島原」という章がありまして、
壬生はもちろん新撰組の事ですが、
島原についての描写もあるのですが、
これが意外にも、汚い汚い。
昔の光、今いずこ?です。
 滝沢馬琴も「塀が傾いている」と詩に書いた
と本文中にあるのですが随分、廃れて時が経って
いるんですね。
 島原なので当然(?)輪違屋さんも出てきます。
 
 
 山南「これがホントの傾城でしょうか?」
 土方「笑えねぇこと言うんじゃねぇ」
 
 幕末に志士が来て、おのぼりさんが、
「島原さ、行くべぇ」と再びの島原フィーバー
が来たとも書いてあります。
「なんでぇ、きどりやがって」
「古くとも流石は島原」
と両極端な感想を持ちましたとさ。
 
 1巻の「壬生と島原」の章を読んで思い出したの
が「大島渚」の新撰組映画・「御法度」
(というか前髪の惣三郎)でした。
 偶然ですが富士見書房の時代小説文庫版の
大菩薩峠で大島渚があとがきを書いている巻があり
まして当時の思いでも語っていました。
 なので結びつけてしまいましたが、いくつか
共通点があります。

 「御法度(前髪の惣三郎)」にも島原や輪違屋も
出てきますし、もちろん新撰組隊士も出てきます。
 大島渚は「壬生と島原」みたいな雰囲気が作り
たかったのか、もしかして御法度は監督なりの
大菩薩峠だったのでしょうか?
 全てただの推測ですが。

山南「輪違屋さんが間違い屋さんにならないと良いですね」
土方「島原は男をおかしくするのかよ?」 
 
 甲源一刀流は時代劇であまり良いイメージがない
のは机龍之助が甲源一刀流の使い手であるこの
小説から来てるのでしょうか?
 燃えよ剣の六車宗白、燃えよ剣をバイブルと
する、るろうに剣心のいとうみきお(比留間も
実は実在の甲源一刀流の使い手から取られている)
などなど。