昔、床屋で、お母さんに連れてこられた、
幼稚園児くらいの可愛い男の子と隣り合わせたことがありました。
私を担当していた理容師さんの、母親と思われる初老の女性がその子の担当になり、
子どもを退屈させまいとその子にいろいろと話しかけていました。
しかし、アンパンマンの話をしてもディズニーランドの話をしても、その子はいっこうに乗ってきません。
困り果てた様子で彼女はその子にこう問いかけました。
「ぼくの一番好きなものはな~に?」
それでも押し黙っていた彼に、その子のお母さんがたまりかねて言いました。
「カズヒロ、好きなものあるでしょ。おばさんに教えてあげて。」
彼はさらに一瞬ためらってから、厳かに一言だけ発しました。
「オクラ。」
可愛い男の子が口にしたあまりにも意外な名詞に私は腹がよじれそうになりましたが、
顔を背けながらなんとか笑いをこらえました。
お母さんの 「あんた、何言ってんの。もっと他に好きなものあるでしょ」 とか、
その女性の 「オクラって美味しいわよねぇ」 という空しいフォローが続きましたが、
その後もとうとう話が盛り上がることはありませんでした。
私はただひたすら自分の散髪が早く終わって、どこかで大爆笑したいとだけ願っていました。
あのときのその一言を思い出すと今でも私は笑えてくるのですが、
はたしてこれだけの状況説明でその可笑しさを皆さんにお伝えできたのか自信がありません。
幼稚園児くらいの可愛い男の子と隣り合わせたことがありました。
私を担当していた理容師さんの、母親と思われる初老の女性がその子の担当になり、
子どもを退屈させまいとその子にいろいろと話しかけていました。
しかし、アンパンマンの話をしてもディズニーランドの話をしても、その子はいっこうに乗ってきません。
困り果てた様子で彼女はその子にこう問いかけました。
「ぼくの一番好きなものはな~に?」
それでも押し黙っていた彼に、その子のお母さんがたまりかねて言いました。
「カズヒロ、好きなものあるでしょ。おばさんに教えてあげて。」
彼はさらに一瞬ためらってから、厳かに一言だけ発しました。
「オクラ。」
可愛い男の子が口にしたあまりにも意外な名詞に私は腹がよじれそうになりましたが、
顔を背けながらなんとか笑いをこらえました。
お母さんの 「あんた、何言ってんの。もっと他に好きなものあるでしょ」 とか、
その女性の 「オクラって美味しいわよねぇ」 という空しいフォローが続きましたが、
その後もとうとう話が盛り上がることはありませんでした。
私はただひたすら自分の散髪が早く終わって、どこかで大爆笑したいとだけ願っていました。
あのときのその一言を思い出すと今でも私は笑えてくるのですが、
はたしてこれだけの状況説明でその可笑しさを皆さんにお伝えできたのか自信がありません。