4/25 あれはいつだった? 第94話
翌朝4時、旭は長野に電話した。
そして言った。
直子に逃げられた。
旭の話はこうだった。
長野の予約したホテルに着き、チェクインの手続きをしている間
直子はロビーで待っていた。
部屋のカードをもらい直子の待っているはずのことろに行ったけど
直子がいない。
直子はトイレかと思い待っていたけどいつまで経っても来ない。
入口に行ってそこにいたベルボーイに直子を見かけなかったか
聞いたら、そのお客様ならタクシーでお出かけになりましたと
言われたと言った。
わかったと長野は言った。
長野はすぐ直子に渡したスマホに電話してみた。
スマホは電源が入っていなかった。
長野は直子の家族の連絡先をまったく知らない。
コンタクトの仕様がなかった。
長野は解せなかった。
直子は結婚をあんなに喜んでいたではないか?
あれは嘘だったのか?
信じられなかった。
ただただ直子の無事を祈った。
帰国しても直子は長野の屋敷には戻っていなかった。
戻りようがなかった。
直子はここがどこだか知らない。
長野は旭にあった。
直子は何か言ってなかったか?
お前と結婚するってルビーの指輪を見せてくれたよ。
旭、お前直子の自宅を知っているか?
知ってはいるけど、どうやって電話するのよ?
なんて言えばいい?
それでも長野は直子の実家の電話番号を聞き出した。
自宅に戻ってから長野はいろいろ考えた。
電話してみた。
今村ですの声に、
今村直子さんとお話ししたいのですがと
言ってみた。
直子のお友達ですか?
はあ、友達というほどでもないのですが
帰国しましたのでご連絡しました。
どちら様ですか?
長野浩といいます。
どうか帰宅していますように
長野は祈った。
直子とどこで会ったのですか?
成田ですが・・・・
成田ですか?
ちょうどイタリアに出張でして。
そうですか? 直子は今いないのですが?
いつごろお帰りですか?
ちょっと直子の予定がわからないもので
そうですか、じゃまたかけてみます。
それで長野は電話を切った。
タクシーで外出した・・・・?
長野はホテルに行ってみた。
長野さまと支配人が出てきた。
長野は友達二人がいつチェックインしてアウトしたか
見てもらった。
確かにお二人はチェックインされています。
チェックアウトはされていますが、支払はなかったようで
こちらでは部屋のカードだけ回収してあります。
いつごろかはちょっとわかりかねます。
直子はチェックインの時にタクシーで外出したと旭が言った。
長野は彼らが泊まったという部屋を見せてもらった。
それから時間が経過している。
掃除もされている。
それでも長野は丁寧に部屋の中をみた。
寝室はしっかりベッドメイクされていた。
長野はベッド下の厚い絨毯に手を滑らせた。
手の平になにかついた。
それは黒い何かの破片だった。
帰宅してから長野はその破片を机の上のペン皿においておいた。
長野は書斎に行った。
エステートの売却の書類を弁護士に渡し、経理処理を以来する必要があった。
アポは金曜日だ。
それまで金庫に入れておこうと金庫を開いた。
そこに鞭が束ねてあった。
それを手にとってみた。
それから1本の鞭を手にした。
長野はそれを出して金庫を閉じリビングに行った。
ペン皿に入れたものをつまんで鞭の材質と比べた。
かけらは鞭だった。
旭はあの寝室で直子を鞭打った。
直子は部屋に入った。
チェックイン中に直子は脱走していなかった。
旭を友人だと思っていた。
旭は直子の元所有者だ。
旭は、旭は直子をどうしたんだろう?
直子が無事でありますように、再び長野は祈った。