
夏椿の花を見上げると、その上に飛行機雲が長く長く続いている。
やがてその雲は南の方へ吹かれ移動して、千切れ雲へと変わった。
それで五千メートル以上の上空は風が強いのだなと思った。
そういえば、今日は涼しい風が地上でもよく吹いて、
気温が高いにもかかわらず、過ごし易かった。

『 諦念は忘るるに似て夏椿 』この句を知ったのは、天城にある
藤戸寺を尋ねた時、沙羅双樹の木がお庭にあって、白く上品な花びらに
黄色い蘂が美しい「夏椿」と呼ばれる花が沢山咲いていたのだが、
一日花なので儚く落花してしまうので、この名句が生まれたのでしょう。
ああなりたい、こうしたい等、人は何時も願望を持ちつつ生きている。
その人の運命や宿命といったものを感じながらも。
『 諦念は忘るるに似て夏椿 』の名句は藤戸寺の門の付近で見つけて、
感銘を受けたことを今も思い出す。
