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リヒテルによるシューベルトのソナタ その3

2017年12月29日 20時51分55秒 | シューベルト
今年もあとわずかになりました。28日が仕事納めでした。私が就職した頃は、28日は昼からは職場で大宴会が毎年ありました。昼間から酒飲んで、まあ今では考えられないことですねえ(もちろん私の職場だけかもしれませんが)。当然全員参加しているわけではなく、中心メンバーと若手。特に、新入社員は必須らしく、何も考えず当日参加していた私は、当時の支店長さんにほめられたのでした。今は、仕事がないと休みを取るものが多く、午後からは2~3という状況でした。休めるときに休もう!」ということで、正しいことでしょうねえ。

そんなわけで、今回はシューベルト。私の元同僚はピアノをこよなく愛する方なんですが、このシューベルトのピアノソナタは全く聴かないそうです。理由は嫌い、曲が変だ、ということでした。よくわかりませんが、私的には近年は最もよく聴くピアノ曲かな、と思います。ということは、けっこう好きなんですね。よく言われるのが、冗長ととか構造的な問題とか、まあ問題はありますが、この作曲家の美しいメロディは何者にもかなわないと思うのですが…。

そんな中から、ピアノソナタ第19番ハ短調D.958『遺作』であります。ご存知のとおり、19~21番の3曲は、シューベルトの最晩年、死の二ヶ月前、1828年9月の三週間ほどでこの3曲は作曲されたもの。まあ、3曲を三週間で作曲するとは、この人の天才たる所以でしょうが、凄いですねえ。31才の若さですから、死期を悟っていたとは思えませんが、最晩年のシューベルトは短期間のうちに、凄まじい勢いで、いろんな作品を残していますね。

それで、この演奏ですが、ケンプ、内田光子、ルプーなどの名演がありますが、今回はスヴィヤトスラフ・リヒテルの演奏。1972年ザルツブルグのクレスハイム宮殿での録音です。リヒテルのシューベルトは、1973年ザルツブルグで録音した21番が今回のCDと一緒にビクターから発売されていました。EMIからは13番、まとめると9,11,13,14,15,18,19,21番あたりがあります。ただ、まとめて同じレーベルからということでもなく、いろんなところからバラバラなので、同曲異演もそれなりにあるかもしれません。

リヒテルの演奏、全体で約32分。ケンプは約30分ですのでテンポがゆったり。第1楽章は3分ほど早く、第4楽章は反対に2分ほど早い。第2・3楽章も若干速い、ということ。これだけみても、この演奏が個性的なことがわかります。特に第1楽章のゆったりとしたテンポでスケールの大きな演奏。それが第4楽章になると、疾走しする。もうリヒテルの独壇場ですねえ。もうやりたい放題ですかね。そんなことで個性的な演奏ですが、曲の説得力は大きいし、聴き応えがあり、面白い。リヒテルらしい演奏です。

第1楽章、ゆったりとしたテンポで一音一音が独立しているように弾く中で、曲に本質が突きつけられるよう。一見散漫な印象を持つが、聴き進むにつれて巨大なスケールが眼前に立ちはだかります。こんな演奏はリヒテルでないと聴けませんね。第2楽章。揺れ動く心情をリヒテルのピアノが突きつけるように展開。シューベルトの内面かもしれませんが、それを鋭く表現するのも、リヒテルならではの技術でしょう。冷徹さや温和さがめまぐるしい。第3楽章メヌエット。ここでも冷徹さが増すピアノ。トリオは若干明るさもあるが、終始しているには断崖に立つシューベルトと言えば大袈裟でしょうか、そして、第四楽章。これまでのいろんな思いを吹っ切るよういなアレグロ。いろんな迷いがあるが、それらから無理にでも、もしくは達観するような境地にたどり着こうとしているピアノです。本当に、聴いていていろんな思いがめぐる演奏であります。加えて、このソナタのあとに即興曲D.935の第2楽章が収められています。実に優しくこころに染み込むようなピアノ。そして一転して強打による演奏。その繰り返しがいいです。中間部のピアノも滑らかで澄んだ美しさが漂っています。

正月は三日までのお休み。あと5日。忘年会もそれなりにやって、あとは静かに家で年越し。本を読みながら音楽を聴く。至福のときであります。
(VICTOR VICC-22001 1994年)

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