「ミマー。そっと玄関に来て。おどろかないでよ」
ゴキブリでもいるのかしら。
向こう三軒両隣までなりひびく、けたたましい悲鳴をあげるわたし。
夫はそれを警戒しているのだ。
なにかしら。
なにがいるのかしら。
庭から玄関にもどる。
前もって十分になにをみても動じないようにこころの準備をしていたのに。
ウッと喉元で悲鳴をおさえるのに必死だった。
おとなの握りこぶしを二つ並べたほどの、ああおどろいた、ガマ蛙が玄関に鎮座していた。
その茶褐色の不気味な肌。形。
夫の警告がなかったら、まちがいなく絶叫していたろう。
その翌朝。
玄関の前のバラの小枝に小さな蛙が出現。
昨日の蛙が、かえってきたみたい。
まるでナルトのガマ仙人の忍法にかかったみたい。
おおきなガマ蛙をそっと逃がしてやった。
お礼にまた現れたみたい。
さっそくこんどこそ狙いすましてパチリ。
バラの細い枝に必死にしがみついている蛙
リルケの薔薇