いじめ「重大事態」7割経験 8自治体は再調査 都道府県・政令市
毎日新聞2017年8月8日 東京朝刊
2013年9月のいじめ防止対策推進法施行後、今年6月1日までに47都道府県と20政令市のうち少なくとも7割の45自治体で、いじめ自殺などが疑われる「重大事態」が起きていたことが毎日新聞のアンケートで分かった。教育委員会などの第三者機関が一旦調査したものの、このうち2割近い8自治体で首長が別の第三者機関を設置して再調査していた。いじめと自殺の因果関係が認められないことなどを不服とし、遺族が再調査を求める事例が全国であり、調査体制の見直しを求める首長の意見もあった。

全都道府県・政令市の首長67人にあててそれぞれ都道府県立校と市立校について質問し、福岡県知事と広島市長を除く65人から回答を得た。
いじめ防止法は、いじめが原因と疑われる自殺など重大事態があった場合に、教育委員会や学校に調査のための第三者機関の設置を義務づけている。だが、青森県立高2年の女子生徒(当時17歳)が14年に自殺したケースでは、県教委による第三者機関が自殺との直接的な因果関係を否定。両親らの要望を受け、県知事が同法に基づき実施を決めた再調査で一定の因果関係が認められるなど結果が逆転する事例が出ている。
アンケートでは望ましい調査組織について質問。27人(42%)は、教育行政の独立性を保障する観点などから、いじめ防止法が定める現在の「学校や教育委員会の第三者機関」と答えた。8人(12%)は、現在のような自治体ごとではなく「全国的な第三者機関」や、教育委員会から独立した「首長が設置する第三者機関」を選んだ。首長による組織を挙げた鳥取県の平井伸治知事は「教育委員会の中でいじめの存在を隠蔽(いんぺい)する事態が生じないとも言い切れない」と指摘した。
遺族らが第三者機関の委員選定に関わったり審議を傍聴したりする「調査過程への当事者参加」に賛成は1人(2%)。「遺族らの要望は配慮すべきだが望ましくない」と回答したのは22人(34%)だった。「その他」を選んだ中には、何らかの形で参加を検討すべきだとの声もあった。【夫彰子、一宮俊介】
いじめ自殺 遺族、寄る辺なき闘い 「子の代弁者、親だけ」真相へ再調査実現
毎日新聞2017年8月8日 東京朝刊
いじめ自殺などが疑われる「重大事態」をめぐる毎日新聞の首長アンケートでは、重大事態を調査した自治体の2割近くで再調査になっていた。調査のあり方について自治体ごとに考え方の違いがあり、規模の小さい自治体ゆえの悩みも浮かび上がった。遺族側にとっても再調査を求めることによる心の負担は大きい。【夫彰子、一宮俊介】
「みれんなんてない」
「まさか自分が死ぬなんてな」
昨年8月19日の早朝。青森県東北町立中1年の男子生徒(当時12歳)がいじめを訴えるメモを残して命を絶った。書き置きには「生と死」への相反するような思いが書き殴られていた。
「これからどうすればいいのか頼る先もなかった」。生徒の母親(50)は当時の心境をこう振り返る。息子は1週間後に誕生日を迎えるはずだった。突然の死に平常心を保てるはずもない。町教委が設置した第三者機関は昨年9月に調査を始めたが、調査の根拠となる「いじめ防止対策推進法」の内容は詳しく知らなかったし、助言を求める相手も身近にいなかった。両親はただ町教委に言われた通りにするしかなかった。
約2カ月間に6回あった聞き取りで、質問に正確に答えようと息子の過去を懸命に思い出そうとした。帰り道では「あんな答え方で良かったのだろうか」と反省の言葉ばかりが漏れた。いじめに関わったとされる生徒らへの聞き取りはなかなか進まず、このまま調査が終わるのではと焦りが募った。それでも「調査で本当のことが明らかになると信じよう」と待ち続けた。
だが、完成した報告書の概要を昨年12月に聞いた両親は失望した。報告書は、学校側の対応に問題があったことは指摘していた。一方で、息子は誰がどんないじめをしていたのかを「遺書」に記していたのに報告書で触れたのはわずかで、いじめと認定されたのは3件だけ。いじめ以外の要因も重なって命を絶ったと結論づけていた。息子が椅子を蹴られていたことを母親は学校に相談していたが、学校側には記録がなかった。「学校側の意見を重視していると感じた」
いじめに加担したことを正直に話し、反省している子供たちがいることも知っている。「また(心理的に)揺さぶってしまうのではないか」と再調査を求めることに後ろめたさもあった。それでも「息子の訴えを代弁できるのは親しかいない」と、年明けの今年1月、再調査の要望書を提出した。3月から町長が委嘱した別の第三者機関が再び調査している。
両親は今も代理人の弁護士を立てていない。「制度の中で、家族や息子の思いがきちんと反映されないのはおかしい」と考えるからだ。再調査委員会の委員による聞き取り調査は丁寧で、誠実さを感じている。だから、次の結果を信じようと思っている。「(何があったのか)遺書で息子が残していた言葉を第一に考えてほしい」
自治体スタンスに差
毎日新聞のアンケートでは65都道府県・政令市の首長以外にいじめ自殺の疑いが明らかになった11市町の首長にも聞いた。計76人の回答からは、考え方の違いが浮き彫りになったほか、全国的な調査組織の設置など具体的な提案もあった。
青森市と茨城県取手市では今年5月と6月、自殺した生徒の遺族が調査内容などに不服を訴え、市教委による第三者機関が報告を出す前に解散した。こうした例も含めると、再調査にこそなっていないが、教育委員会による第三者機関を遺族が「NO」とするケースはさらに多いとみられる。
ただ、どのような調査組織が望ましいのかは首長ごとに意見は異なる。取手市の藤井信吾市長は、教育委員会や学校が主体の組織という今の制度を選択し、「学校は保護者と、教育委員会は学校と、連携がとりやすいため」と理由を挙げた。青森市の小野寺晃彦市長は「現段階で判断できない」と迷いをうかがわせる。山形県天童市の山本信治市長は、自治体単位の調査は「公平・公正に疑義を持たれる」として全国的な調査組織を求めた。
調査にあたる委員の選定も難しい課題だ。青森県東北町の蛯名鉱治町長は、自治体が「調査組織の委員を選ぶのは困難」と指摘する。地方の小さな市町村は委員に適切な人材がいないケースがほとんどだからだ。
委員の選定方法で具体案を挙げる首長もいた。広島県の湯崎英彦知事は、国が地区ごとに調査に参加できる外部の専門家を任命し、重大事態が起きれば速やかに調査組織を設置できるようにすることを提案する。
文部科学省は今年3月、遺族に寄り添って調査するよう求めたが、保護者が調査過程にどの程度参加できるのかは明確でない。
アンケートで「可能な限り参加すべきだ」を選んだのは鳥取県の平井伸治知事だけで「最も尊重すべきは当事者の意向」と指摘。沖縄県の翁長雄志知事は「被害者感情など心情的な偏りが生じる」と考え、参加は望ましくないと回答した。
2014年1月に中学生が自殺した天童市や長崎県新上五島町、15年7月に中学2年の男子生徒が自殺した岩手県矢巾町は遺族に委員推薦や事前了承の権利を認めた。新上五島町の江上悦生町長は、遺族が委員の半数を推薦することで「(教育委員会に対して)公正・中立になり互いに納得できる」と指摘している。
なんか、変!
「都道府県・政令市の首長」だからなのか?
こんなにも意識にずれがあるのものなのか・・・
わたしの意識がずれているのか?