子どもの自殺が最も多い「9月1日」~子どもにだって<話したくないこと>がある
ヘルスプレス - 2017年8月31日
SEKAI NO OWARIの『プレゼント』を愛聴する娘の影響もあって、私もその歌詞をなんとなく覚えてしまった。
相手のことがよくわからないから、嫌いだと思い込んでしまう。 周囲の人が嫌いと言うから、なんとなく自分も話を合わせてしまった。 一人になりたくないけど、どう表現していいのかわからない。 そんな自分が、自分でも嫌い......
思春期の繊細な心の動きが表現された詩だ。
大人にとっては些細な対人トラブルでも、思春期の子どもたちには人生を左右する重大な問題。ときには将来を絶望するほど、追いつめられるかもしれない。
夏休みが終わって子どもたちが久しぶりに登校する9月1日。この日は、子どもの自殺者数が最も多い日だ。
内閣府の2015年版「自殺対策白書」によると、1972年から2013年の累計で、18歳以下の自殺者数が最も多かった日は9月1日で131人。また、8月31日は92人で、9月2日は94人だった。「休み明けの直後は大きなプレッシャーや精神的動揺が生じやすい」と白書で指摘されている。
楽しい夏休みの終わりに、子どもたちの自殺を防ぐために、私たち大人ができるのはどんなことだろうか。
夏休み明けに向けた<いじめ防止強化キャンペーン>
文部科学省は「夏休み明けに向けた官民連携によるいじめ防止強化キャンペーン」を実施している。子どもからの相談を受け付ける民間企業やNPO法人などを以下で紹介している。
■夏休み明けに向けた官民連携によるいじめ防止強化キャンペーンhttp://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/08/__icsFiles/afieldfile/2017/08/14/1393634_001_1.pdf
さらに、学校でいじめが原因とみられる子どもの自殺などが起きた際、現地に赴き、学校や教育委員会への指導のほか、遺族対応などを担う「いじめ・自殺等対策専門官」を文部科学省内に配置する方針を決めた。
新聞各社は、教職員向けに子どもの自殺予防研修を導入した宮崎県の中学校や、子どもの居場所づくりに取り組むNPO法人などを8月末に取り上げてきた。遅まきながら、国を挙げての子どもへの自殺予防対策が進められている。
子どもの心を開いた手と手のコミュニケーション
難しい点は、思春期の子どもが、簡単には大人に心を開かないことだ。自分の気持ちをうまく言葉で表現できなかったり、ごまかしたりしがちである。
たとえ相手が親でも、いや、親だからこそ、本当の自分の気持ちを知られたくないと、子どもは距離を置こうとすることもある。
過去に私が取材した教育カウンセラーは、「言葉を使って子どもの心を開こうとはしていない」と話した。彼は公立高校の教員を34年も務めた後、引きこもりや不登校の子どもたちの教育相談を行っている。
「子どもにだって、話したくないことがあるわけじゃないですか。それを大人が尋問するように聞き出そうとしても、逆効果なんですよ」
そんな彼は、子どもたちに手のひらマッサージを施している。子どもに片手を出してもらい、それを彼は両手で包み込むようにして、ゆっくりとマッサージをする。
「マッサージしているときに、私からはなにも言いません。ただ、ちょっとした<シコリ>から、子どもの気持ちがなんとなくわかるんですよ。しばらくもんであげていると『実は......』と子どものほうから話してくることも多いんです」
百の言葉よりも、触れ合う温かさと安心感が子どもの気持ちをほぐすのだろう。
子どもの様子がちょっとおかしいと思ったら、「どうしたの」「何があったの」と問いかける前に、そっと優しく体に触れてあげる。わかってあげようとするよりも、ただそばにいてあげる。こうした対応も必要なのかもしれない。 (文=森真希)
森真希(もり・まき) 医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。