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「環境汚染大国」

2019年09月28日 | 社会・経済

日本は「環境汚染大国」という世界の評価と進次郎大臣「ステーキ」発言の波紋

  BUSINESS INSIDER jp

   津山恵子 2019/09/27

   小泉進次郎環境相の言動が厳しい視線に、さらされている。だが、それは小泉氏一人の問題だろうか。大臣の言動は、図らずも日本全体の気候変動問題に対する関心の薄さや無知を晒してしまったのではないだろうか。

   日本メディアを引き連れ、ニューヨークのステーキ屋に行った小泉進次郎・新環境相のビデオを見て、目を疑った。

環境大臣という環境問題で日本を代表する公人が「気候行動サミット」に参加するために来たニューヨークで、ドヤ顔でステーキ屋に行くのを喧伝するセンスのなさ。それをテレビでニュースであるかのように放送するメディア。

   放送したTBSによると、小泉氏は「毎日でもステーキを食べたい」と話していた。TPOを完全に間違えている。

   牛肉、豚肉、鶏肉などの畜産業界は、農場で多大な土地と水を汚染し、加工や輸送にも多くの二酸化炭素を出すため、「地球汚染ビジネス」の代表格とみられている。少なくとも欧米では環境問題を語る上では“常識”とされ、肉を食べないベジタリアンになる若者も増えているというのに、信じられない発言だ。

   その後、その問題をメディアから指摘されると、小泉氏は、

「(ステーキ屋に行ったことが)ニュースになるのなら、環境問題を考えるいいきっかけになる」

と発言、半ば開き直ったような感さえある。

   サミットのわずか3日前の9月20日には、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)の呼びかけで、163カ国で約400万人もの子どもや若者が平日に教室から出て「グローバル環境マーチ(欧米では#ClimateStrike)」を行ったばかりだ。

   ニューヨークのグローバル環境マーチでは、畜産工場の禁止を訴えて、牛のマスクをかぶって歩いている若者らがいた。子どもらが手製で持ち寄ったプラカードにも「ノー・ミート」と書いてあるものもあった。

NYの公立校では週1肉なしの日

   ニューヨーク市は学校給食による地球温暖化ガスを削減するため、2019年9月の新学期から、月曜日は肉なしのメニューに切り替えている。肉を消費しないことで、生徒の健康と、地球の健全さも維持しようという「ミートレス・マンデー運動」の一環で、全米に広がっている。米農務省は、メニューのガイドラインも作成している。

   環境相が、公然とステーキ屋に行くのが批判される理由は、以下のデータでも明らかだ。

   肉を食べる人は、地球温暖化ガスの排出量が完全菜食主義者であるビーガンの2倍以上とされる(米農務省による)

   肉、乳製品、皮革製品、ウール製品など家畜に関連するビジネスは、人間に起因する地球温暖化ガスの14.5%を占める。その中で、牛肉が占める割合が一番高い(国連の食糧農業機関による)

牛肉113グラムで車で10キロ超走るのと同じ温暖化ガスが排出される(非営利団体「エンバイロンメンタル・ワーキング・グループによる)

脱火力発電に向けての沈黙

   同時に、小泉氏が環境相にふさわしくないことが、気候行動サミット中の記者会見でも露呈した。

   海外メディア記者(やり取りは英語)「石炭は温暖化の大きな原因だが、脱石炭火力発電に向けて今後どうしますか?」

小泉氏「減らす……」

記者「どうやって?」

小泉氏「……(6秒間沈黙)。私は大臣に先週なったばかりです。同僚、環境省スタッフと話し合っています」

環境省が想定問答を作成していなかったはずはないだろう。つまり、小泉氏が政策や世界の動向を注視していないとみられる。

   日本では、大量の二酸化炭素を出す石炭火力発電の割合が高いことは、海外の環境運動家から批判の的だ。国連のグテーレス事務総長は、2020年以降の新規建設をやめるように加盟国に何度も要請してきた。欧州では、将来的に火力発電からの撤退を決める国が相次いでいる。

ベルギーは2016年までに欧州連合(EU)で初めて、火力発電ゼロを達成。フランス、ドイツをはじめ、欧州の10カ国以上が、稼働ゼロか段階的削減を宣言している。

   もちろんこの他にも物議を醸した「セクシー発言」もあった。当初日本ではセクシーという言葉尻を捉えての批判が多かったのだが、海外のメディアでの批判の本質は用法でなく、火力発電についての質問に答えられず、気候変動に対する「より効果がある」政策を表明できなかったことに向けられている。

日本の環境相は、皮肉的な石炭依存緩和についての失言を乗り越えられるか(CBS)

気候変動に関する小泉氏の「セクシー」発言、一部の日本人(活動家)には空虚に響く(ロイター)

日本は環境汚染大国

   国連のグテレス事務総長は、気候行動サミットで、「77カ国が2050年までに、地球温暖化ガスの排出を実質ゼロにするとの目標を掲げた。70カ国が2020年までに国としての対策を強化させると表明した」と宣言した。

米テレビ局ABCは、この77カ国に「炭素汚染大国である中国、アメリカ、インド、ロシア、日本は含まれなかった」と報じている。

   自然エネルギー財団によると、日本の発受電電力量に占める火力発電の割合は1990年に9.7%だったのが、2016年には32.3%になった。電力量の3割でも、発電による二酸化炭素の排出は全体の5割に及ぶ。欧州と異なり、廃炉計画も少ないという。

   その上でに福島第一原発の事故による処理水の海洋放出問題を巡って、海洋汚染をする「環境汚染大国」という認識も定着しつつあり、海外投資家は日本の電力会社や関連企業への投資から撤退しているという。今回の気候行動サミットで、大手銀行が環境汚染企業への投資をやめる発表もしており、今後日本のエネルギー関連業界への投資撤退が広がる可能性はある。

日本の政府と企業は、国民の間にこうしたニュースが広まっていないのをいいことに、効率を求めて、環境汚染度が高いビジネスモデルを取ってきたとも言える。

 

   16歳のトゥンベリさんは、環境運動のために長期にわたって学校に行っていない。気候サミットでの演説では首脳らを前に、こう怒りをぶつけた。

「皆さんは、口先だけの発言で、私から夢と子ども時代を取り上げた。人々は苦しみ、死んでいるのに」

このような中、日本も環境相もそろって、環境問題に対する真剣な姿勢を示さなかったことが、国際舞台で露呈した。

(文・津山恵子)


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