藤田孝典 | NPO法人ほっとプラス理事 聖学院大学心理福祉学部客員准教授
YAHOO!News(個人)8/18(火)
麻生太郎副総理「あなたも147日間休まず働いてみたことあります?」
また麻生太郎副総理の不可解な発言が波紋を呼んでいる。
以下の記事にもある通り、休暇を取る安倍首相を擁護する流れで「あなたも147日間休まず働いてみたことありますか?ないだろうね。140日働いたこともない人が、働いた人のこと言ったって分かんないわけですよ」と記者団にコメントした。
安倍総理は17日午前、都内の大学病院を訪れ、7時間以上にわたって検査を受けました。
健康不安の憶測が出る中、今回の検査について総理周辺は「夏季休暇を利用して休み明けの体調管理に万全を期すため検診を受けた」と説明。安倍総理は、6月に人間ドックを受診していて病院関係者は「6月の追加検査だ」と明らかにしていますが、検査の詳細については分かっていません。
自民党幹部は“総理は元気”などとして健康不安説を否定しますが、中堅・若手の間からは“総理は本当に大丈夫か”などと不安視する声も上がっています。安倍総理は病院を出た後、都内の私邸に戻り記者団の問いかけに「お疲れさま」とのみ答えました。
一方、麻生財務大臣は17日夜、報道陣の取材に・・・
「あなたも147日間休まず働いてみたことありますか?ないだろうね、だったら意味分かるじゃない。140日休まないで働いたことないだろう。140日働いたこともない人が、働いた人のこと言ったって分かんないわけですよ」(麻生太郎財務相)
一般的に147日間働き続けることは違法性が高い
麻生太郎副総理は記者団に対して「あなたも147日間休まず働いてみたことあります?」と質問を投げかけている。
実はこの質問自体が愚問である。そもそも会社と雇用契約がある記者たちは140日以上も連続で働いてはいけない。
このような事実があれば、労働基準監督署が過労死の発生などを未然に防止するため、是正に動かなければならないだろう。
その上で「140日働いたこともない人が、働いた人のこと言ったって分かんないわけですよ。」と140日以上働いた経験がない記者らの質問を退けようとしている。
記者の中には、長時間労働が常態化し、140日以上働いている人もいるのでは、と思うが、原則として適切な働き方ではない。
各報道機関と雇用契約を交わしている記者たちは140日以上、連続で働いてはいけない。それにも関わらず、麻生太郎副総理は働いていない人間にはわからないだろうと述べる。
140日間連続で働いていれば違法性が高いのだが、その経験がなければ質問する資質がない、とでも言いたいのだろうか。
麻生太郎副総理の論理が支離滅裂だとお分かりいただけるのではないだろうか。
いうまでもなく、労働者は所定の休暇だけでなく、有給休暇などきちんと取得し、心身をメンテナンスする必要がある。
だから労働基準法など各種労働法は労働者に大きな負荷をかけないように、最低限のルールを規定している。
近年は過労死、いわゆる「ブラック企業」と呼ばれる企業が問題視されており、厚生労働省も是正に動きを見せている。
多くの労働事件、労働相談では、長時間労働、休暇の不足を企業が労働者に強いたり、人事労務管理がおこなわれていない事例が後を絶たない。
だから、職場での精神疾患の発生、離職、過労死、過労自殺が止まらないのである。
さらに、麻生副総理の問題点は、首相と一般労働者を単純比較して発言することにある。
首相は自分の意思で仕事量を増減する裁量がある人であり、記者は原則として組織や上司の指揮命令を受ける。
当たり前だが首相の働き方と記者の働き方は根本的に違う。
極端に言えば、首相は誰とも労働契約を結んでいないため、いつ何の仕事をどうしようが自由である。
その仕事に対する評価は各市民が選挙などを通じておこなうが、首相はいつ仕事をするのか、休むのか、選択肢が無数にある。
一方で、記者など一般的な働き方は、労働契約に基づいて、所定労働時間があり、その範囲内で企業や上司の指揮命令のもと働かざるを得ない。
この裁量が少ない働き方は心身に大きな負荷をかけるので、適切な休暇や労務管理がルールに基づいて、強制的に必要となる。
いずれにしても、140日間働き続けることがすべての人にとって良いことではない。
長時間働くことを美談とせず、休みをすべての人が適切に取り、休みやすい機運を高めていくことが大事である。
どうぞ、内閣総辞職の上ゆっくりとお休みください。刑務所にお部屋をご用意させていただきましょうか?