「しんぶん赤旗」2025年2月17日
各党間で2025年度予算案の修正協議が行われています。日本維新の会と国民民主党は、それぞれ教育無償化と課税最低限の引き上げ問題で自公との協議を進めています。国民、維新両党は、協議の結果によっては政府予算案に賛成する可能性を示しています。立憲民主党は14日、「修正案(概要)」を発表し、同日与党との協議を始めました。いずれも国会外での密室協議です。各メディアは、今週が「ヤマ場」だと報じ、石破政権は与党過半数割れのもとで、野党との協議で協力を取りつけ予算案の年度内成立を図ろうと狙っています。
教育無償化などの国民的要求の実現は野党共通の課題ですが、大軍拡と大企業バラマキの政府予算案に切り込む国会での熟議は投げ出された形です。メディアも「予算の無駄を削り、必要に応じて組み替えることは重要だが、それによって目指す社会の具体像が見えない」(「毎日」8日付社説)と指摘しています。
日本共産党は14日、大軍拡と大企業への異常なバラマキ政策の転換を骨格とする予算の抜本的組み替え案を発表しました。抜本的組み替え案は「国の未来を考えるなら軍事費ではなく教育と子育ての予算を増やすべきだ」として、給食費の無償化や高校授業料の無償化、大学学費の値上げをやめさせることなども掲げています。税制については、所得税・住民税の減税とともに、すべての人に行き届く消費税減税を求めています。
自民党政治に代わる新しい政治とは何かをめぐり、各党の立場が鋭く問われています。
予算案修正 害悪切り込んでこそ
維新・国民手柄争い 立民も賛成示唆
「日米同盟絶対」に切り込めない他党
物価高騰が国民生活を直撃するなか、軍事費偏重・大企業優遇の予算案を暮らし優先へ抜本的に組み替えることが求められています。しかし、日本維新の会と国民民主党は与党との協議で個別課題での部分的修正を競うだけで、政治のおおもとのゆがみをただす姿勢がありません。
維新は高校授業料などの無償化と社会保障削減をセットで与党に要求。前原誠司共同代表は、現役世代の社会保険料の負担軽減を名目に「数兆円単位で社会保障給付費を削減しなければならない」とし、医療費の窓口負担への金融資産を考慮した応能負担や、市販薬と効果が似た「OTC類似薬」の保険適用の除外などを掲げました。
維新の青柳仁士政調会長は7日、自民、公明両党との会談で、社会保険料を4兆円規模で引き下げるよう要求。そのための財源はなく、社会保険料の軽減と引き換えに高齢者に重い負担と痛みを押しつけるだけです。維新の社会保障削減案は財界要求を丸のみしたもので、自公政権が進める財界優先の政治と一体のものです。
国民民主は所得税の課税最低限「年収103万円の壁」の引き上げをうたっています。30年間据え置かれた課税最低限の引き上げは当然のことですが、政府案では低所得者には減税額が少なく、所得税減税の恩恵がない低所得者がたくさんいます。
低所得者も含めたすべての人が減税の恩恵を受けられる消費税の減税こそ、今求められています。同党は昨年の衆院選政策で消費税の5%への減税を掲げていましたが、今では口にもしなくなりました。
13日に国会内で開かれた大学の学費値上げに反対する学生による集会に、同党は自公とともに不参加。“手取りを増やす”などといいながら、学生が学費を稼ぐためにアルバイトを余儀なくされている状況の改善には背を向けています。
一方、立憲民主党は14日、2025年度予算案の修正案を発表。野田佳彦代表は「(3・8兆円規模の修正案を)丸ごとオーケーだと賛成するしかなくなるのではないか」とごく部分的な修正のもとでの予算案への賛成の可能性を示唆しました。
修正案では「高額療養費制度」の見直し凍結や学校給食無償化、高校無償化の拡充など一定の国民要求を反映していますが、財源は予備費の減額や基金の活用にとどまり、過去最大の軍事費を温存しています。
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半導体企業に税金投入2兆円 自民に献金4.1億円
出資企業、3年間で 政治と産業のあり方ゆがめる
石破自公政権は、半導体の安定供給が「経済安全保障の観点からも喫緊の課題」だとして、半導体企業「ラピダス」への巨額な支援をしています。本紙の調べで、その「ラピダス」出資企業が2021~23年の3年間で4・1億円もの献金を自民党側にしていたことがわかりました。(藤沢忠明)
ラピダスは、人工知能(AI)などに使われる半導体を開発する会社で、2022年8月に、トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、NEC、ソフトバンク、デンソー、キオクシア、三菱UFJ銀行の大手8社が共同出資して設立しました。27年度に北海道千歳市で量産開始を目指しています。
政府は、すでに研究開発費として最大9200億円を投入。24年度補正予算で1兆円を追加し、25年度予算案でもラピダスへの出資額として1000億円を計上しています。
政府の巨額支援に対し、8社の出資額は、三菱UFJ銀行3億円、他の7社は各10億円のわずか計73億円。政府の丸抱えぶりが際立っています。
政治資金収支報告書によると、ラピダスへの出資企業は、自民党の政治資金団体「国民政治協会」に21~23年の3年間で、トヨタ自動車1億5000万円、ソニーグループ5500万円など計4億1040万円にのぼる献金をしています。(表参照)
大企業への2兆円を超す資金援助は、本来、民間企業が投資すべきものを国が肩代わりするという、まさに財界・大企業への奉仕そのものです。
しかも、政府は7日、ラピダスへの支援拡大を可能とする法「改正」案を閣議決定しました。
一方、中小企業対策予算は25年度予算案で、わずか1695億円。石破茂首相は、「企業・団体献金で政策がゆがめられたという記憶はない」などと繰り返し、企業・団体献金を合理化していますが、ラピダス支援は、企業・団体献金が、いかに政治と産業のあり方をゆがめているかを示しています。
■ラピダス出資企業の献金(2021~23年)
トヨタ自動車 1億5000万円
NTT 6200万円※
ソニーグループ 5500万円
NEC 5100万円
デンソー 3240万円
三菱UFJ銀行 6000万円
計 4億1040万円
《注》国民政治協会の政治資金収支報告書で作成。※NTTはグループ3社の合計
大企業への「裏金」的予算配分。
中小企業、国民生活無視。
許せません。