「東京新聞」社説 2022年4月8日
戦禍のウクライナから逃れた人々が来日した=写真。手厚い支援は当然としても、あくまで「避難民」としての受け入れだ。日本が「人権国家」に脱皮するには、難民認定基準を見直し、「難民」を幅広く受け入れる必要がある。
来日した二十人はポーランドを訪問した林芳正外相の帰国に合わせ、政府専用機で到着した。
ロシアの侵攻後、親族や友人などを頼り、四百人以上のウクライナ人が自費で来日している。渡航費用の公平性や二十人の選定基準についての議論は残るが、政府の迅速な対応は評価したい。
二十人は短期滞在の資格で入国し、就労が可能な「特定活動(一年)」の在留資格を得られる。特定活動資格の付与は法相の裁量で日本が加わる難民条約に基づく難民認定制度の枠外だ。このため政府は二十人を避難民と位置付け、難民とは認めていない。
難民条約では難民を「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員、政治的意見」を理由に迫害されかねず、他国に逃れた人びとと規定する。日本政府は厳格に解釈し、他国の侵攻による国外への避難民は該当しないとの立場だ。
だが、国際社会ではより柔軟な解釈が主流だ。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が二〇一六年に公表した国際的保護に関するガイドラインでは、国家間を含む武力紛争や暴力による避難者も難民として認めている。
日本が「難民鎖国」と批判されて久しい。シリア難民の認定率も80%を超える米英に比べ、22%にとどまる。昨年、難民申請が認められなかったスリランカ人女性が入管施設で死亡した。技能実習生を巡る人権侵害も後を絶たず、今回の対応との差は甚だしい。
野党は「戦争等避難者」という在留資格を新設する法案を提出している。昨年廃案になった入管難民法改正案も避難者を「補完的保護対象者」と位置付けていた。
しかし、狭い難民の定義を広げる見直しこそ、国際水準に近づく道ではないか。「一過性の政治的パフォーマンス」とのそしりを免れるためにも、政府は難民保護の拡充に尽力すべきである。
まだ雪に覆われているが、斜面の日当たりのいいところから土が見えだした。