五輪汚職を全把握する男・高橋元理事の“暴露”に戦々恐々な関係者たち…「森元首相も警戒している」
日刊ゲンダイDIGITAR 2022/08/25
大会組織委員会の会長だった森元首相とも特別な関係だったのか──。東京五輪のスポンサー契約を巡る汚職事件で、贈賄容疑で逮捕されたAOKIホールディングス前会長の青木拡憲容疑者が、同社の経営するカラオケ店で森元会長を“接待”していたことが分かり、波紋を呼んでいる。
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驚くのは、受託収賄容疑で逮捕された組織委元理事の高橋治之容疑者が、東京地検特捜部の調べに「AOKI側の依頼で森氏を紹介し、会食をしたことはある」とアッサリ事実を認めていることだ。スポンサー集めの中核を担っただけでなく、招致の段階から億単位のカネを関係者に配っていたとされる高橋容疑者は、東京五輪の“闇”の全てを知る男だ。特捜部は複数の政治家を捜査のターゲットにしているとされるだけに、政財界関係者は「高橋さんは何をしゃべる気なのか」と戦々恐々としているという。
事件の構図は、五輪スポンサーになることを望んだAOKIが、職務権限のある高橋容疑者にワイロを贈ったというもの。高橋容疑者は2017年1月、AOKIに「スポンサーにならないか」と打診。18年10月、スポンサー料を“ディスカウント”してもらったAOKIは、実際にスポンサー契約を結んでいる。
注目は、森氏と青木氏が会食した時期を高橋容疑者が明かしていることだ。同容疑者は会食時期について、AOKIが組織委とスポンサー契約を結ぶ前後だったと明かし、「AOKI側から森氏へ『挨拶がしたい』との意向を受け、紹介した」と説明しているという。当時、森氏は組織委の会長だった。高橋容疑者はスポンサー契約については「具体的な話はしていない」と話しているというが、青木氏と森氏をつないだことを認めたのには、何か意図があるのか。
「高橋さんは古巣の電通が請け負ったスポンサー集めのほぼ全てを担っていた。電通は事実上、“窓口業務”をやっていただけ。だから、高橋さんはスポンサー契約を結ぶに当たって、誰がいつどう関与したか、全てを知っています。森さんと青木前会長の会食を認めたのは、自分以外にスポンサー契約にかかわった人物がいることを示したかった可能性があります」(電通関係者)
最新号の「週刊文春」は、森氏とAOKI側のカラオケ会合のキーマンとして、青木前会長の実弟・宝久氏の名前を報じている。
「高橋さんと森さんは2000年代に接点を持ち、付き合いは長い。とはいえ、お互いに信頼し合っているかというと、微妙なところでしょう。特に森さんは『(高橋容疑者は)どこにいくらカネを流しているのか、オレにもさっぱり分からねえんだ』『おまえはあいつと付き合うんじゃないよ、絶対に』などと周囲にこぼしていたと報じられている。森さんは高橋さんを警戒していると思います」(スポーツ界関係者)
既に特捜部のターゲットとして複数の議員の名前が囁かれている。いずれも高橋容疑者と親しいといわれている政治家だ。AOKI以外のスポンサー企業が、高橋容疑者の“仲介”によって、スポンサー料を減免してもらったことも分かっている。高橋容疑者の暴露の可能性に、今頃、関係者はビクビクしているに違いない。
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