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“ジャニ離れ”で巻き起こる「タレントに罪はない」論が、まるで見当違いなワケ

2023年09月15日 | 社会・経済

ITmedia ビジネスオンライン9/15(金)

 ジャニーズ事務所は、日本のエンターテインメント業界でその名を不動のものとしてきた。同社は数多くのトップアイドルを生み出し、その存在感はテレビや音楽界だけでなく、広告業界にも大きな影響を与えてきた。しかしジャニー喜多川氏の死後に性加害が国際問題化したことで、これまでメディアも表沙汰にすることのなかった目も疑う不祥事が公になっている。

 ジャニーズ事務所に所属するタレントはテレビ番組や映像作品の出演のみならず、日本を代表する大企業のテレビCMにも数多く起用されている。その中でも、特にテレビCMにおける大企業の「ジャニーズ離れ」が大勢になってきた。本稿を執筆した14日午後時点で、アサヒグループHDやキリンHD、サッポロHDのような大手飲料メーカーにとどまらず、東京海上日動火災保険、日本航空なども相次いでタレント起用の見送りを公表している。当初はタレント起用を継続し、テレビCMも放映していた花王やモスバーガーも、一転してテレビCMを取りやめている。

 ジャニーズ事務所は9月13日に、裁判所OBの弁護士3人を中心に構成された被害者救済委員会の設置を表明すると同時に、今後1年間は所属タレントの出演料を本人に全て支払うことで信頼回復に努める方針を発表したが、それでも「ジャニーズ離れ」の動きに歯止めがかからない。

 相次ぐCMスポンサーの起用見送りによって、スポンサー企業側の対応については大勢が決まってきたといえるだろう。しかし、主にジャニーズ事務所のファンや所属タレントと交友関係のある芸能人の間では、相次ぐ「ジャニーズ離れ」に対する批判の声も大きい。

 その背景としては、フジテレビが9月4日の番組改編に関する説明会の場で制作局長が述べた「タレントに問題があったわけではない」ため、キャスティングを継続すると公表したことも大きいだろう。単純にこの言葉を反対解釈してしまうと、罪のない所属タレントの起用を見送ることは不合理な仕打ちであるということになりかねない。

 しかし、企業の危機管理やコンプライアンスの観点から所属タレントの広告起用を見送ることは、ビジネスの世界では当然の意思決定であるといえる。

「タレントに罪はない」ことはスポンサーも分かっている

 そもそも企業がテレビなどでCMを出稿する目的は自社ブランドのイメージアップである。例えば、不祥事を起こしたのがタレント本人であれば、その出演するCMを打ち切ることはブランドイメージ毀損のリスクがあるため当然の対応といえるだろう。しかし、この場合に同じ事務所という理由だけで他のタレントの起用まで見送ることは、先述の通り罪のないタレントに対する不合理な仕打ちであり、そのような対応が実際に取られることはない。

 ジャニーズ事務所の事例が複雑な理由は、事務所のトップが事務所のタレントに対して性加害を働き、長年にわたり事務所全体としてその事実を覆い隠していたことが挙げられる。この場合も所属タレントに罪がないことは確かであり、所属タレントの起用を見送るというスポンサー企業の決定は、事務所に対する制裁という範囲を超えてタレントの生活をも脅かす危険性が高い。しかし、そうであるからといってタレントの起用を続けてしまえば、問題のある事務所をもうけさせてしまうことにつながり、ジャニー氏の犯罪行為や事務所の隠ぺい体質を追認することにもつながる。

 所属タレントの起用に関する議論は、対立する双方の意見を簡潔にまとめると「被害を受けたタレントの救済を重視する」立場と、「事務所への制裁を重視する」立場に大別される。それでもやはり、スポンサー企業の道理としては「事務所への制裁を重視する」方が自然であるし、実際の各企業の動向を見てもこの姿勢が目立ってきている。

 そもそも、被害を受けたタレントを救済するのはスポンサー企業ではなく事務所の方であろう。仮にスポンサー企業が起用を続けたことで得た資金を原資に救済を行うのであれば、事務所側の懐は一切痛まない。また、企業がかけた広告費は最終的に一般消費者の価格に転嫁されることになる。タレントを応援する名目で事務所との取り引きを継続することは、一般消費者の負担で被害者の救済を行うことにもつながりかねない。これはビッグモーターの事例において、同社の不正によって事故率が不当に上がり、一般国民が負担する自動車損害保険料が値上がりした可能性があることにも類似する。

 先述したようにジャニーズ事務所は今後1年、報酬をタレント本人に全額支払うと表明しているが、1年だけ我慢すればスポンサーのお金は再び事務所の利益になってしまう。そのような理由もあって、この対応が「ジャニーズ離れ」を食い止める有効打にはなり得ないだろう。もちろんスポンサーも愚かではなく、タレントに罪がないことは重々承知だ。本音としては所属タレントが一斉に事務所を退所し、新事務所で活動をしてくれれば起用できるのに、と歯がゆく思ってすらいるかもしれない。

 しかし、新事務所の設立も「言うは易し、行うは難し」である。

新事務所設立は茨の道?

 事務所の問題が持続的なものである場合、タレントとして新しい環境を模索することも一つの選択肢として考えられるし、多くの人がその可能性についても言及している。所属タレントが団結して新しい会社を設立することは、以下の点で多くの利点がある。

 ファンやビジネスパートナーに対して、新しいスタートを切ったことを明確にアピールすることができるだけでなく、旧事務所との経済的なつながりを断ち切り、収益を新たな形で分配することが可能となる。しかし、事務所が所有する知的財産権を引き継げなければ、従来のグループ名やあらゆる作品、場合によっては芸名すらも引き継ぐことが不可能だ。そうなれば活動そのものが大きく制限されうる。

 YouTuber事務所のUUUMでは、所属YouTuberの一斉退所が話題となった。ジャニーズ事務所の所属タレントはUUUM所属のYouTuberとは異なり、知的財産権の点で気軽に入ったり抜けたりすることが難しい契約体系になっていると考えられる。

 また、芸能業界には独自のルールやしきたりが存在する。新しい事務所を立ち上げるとなって、「ジャニーズ離れ」のムーブメントが部分的かつ一時的なものとして終われば、旧事務所と取り引きを続ける企業の数は近く増加に転じ、旧事務所の作り上げてきたパワーバランスは変わらないだろう。それだけでなく業界やファン、タレントの間で新旧派での摩擦や対立が生じる可能性も考えられ、混乱は必至だ。

 事務所の社長が変わっても100パーセントの株主である藤島氏が別に存在している場合、新社長の影響力はゼロに等しい。この度の体制変化で何かが変わることを期待することは難しいだろう。とはいえ、タレントが主体となって新しい方向を模索するようになる場合には他の大手事務所などの覚悟あるサポートも必要になってくるだろう。

 「ジャニーズ離れ」はスポンサー側の足並みもそろわなければ混乱をもたらす。国連にも人権問題として取り上げられ、国際問題化しているなかで、ジャニーズ事務所が存続していること自体に疑問符がつく状況だ。今後のエンターテインメント業界の健全な発展のためにも、業界が一丸となって毅然とした態度で臨むべきだろう。

 

筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら


 問題は「ジャニー氏の犯罪行為や事務所の隠ぺい体質」だけにとどまらない様相である。「反社」勢力との融合、そして下記のような犯罪にも関与しているとの指摘である。またメンバーとの「接触」により消された可能性の問題も浮上している。徹底した調査が必要である。

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