「東京新聞」社説 2024年1月17日
阪神・淡路大震災からきょうで29年になります。元日には激しい揺れと甚大な被害を思い起こさせる能登半島地震(M7・6)が起きました。発生から2週間以上たった今も被害の全容は把握できず、道路や水道などインフラ回復のめども立ちません。
大変につらい状況ですが、その中でも阪神大震災の教訓がいくつも生きています。
大震災後に組織された災害派遣医療チーム(DMAT)が能登にも駆けつけました。大震災では倒壊建物から救出後に容体が急変する「クラッシュ症候群」が多発し、50人が亡くなりました。下敷きになると圧迫された部分に毒素がたまり、救出後に毒素が体を巡って悪影響を与えるのです。
石川県珠洲市で倒壊建物から124時間ぶりに救出された90歳代の女性は、あらかじめ点滴を打つなどクラッシュ症候群に配慮しながら病院に運ばれました。
◆海域活断層知らされず
多くの住宅が倒壊しましたが、教訓が生かされた部分もありました。9日に開かれた土木学会の速報会では「2000年以降に建ったと思われる住宅は被害が軽微」と発表されました。阪神大震災で住宅の損傷が大きかったことから同年以降、木造住宅の耐震基準が厳しくなったからです。
一方、教訓が生かされたとは言えない大きな問題も残りました。海域の活断層の存在が広く知らされていなかったことです。
阪神大震災は多くの住民には不意打ちの地震。被災者から聞き取りをした災害情報の専門家は、関西には大地震は来ないとの「安全神話」があったと指摘します。
しかし、学者の考えは異なっていました。国の研究所や大学の研究者で組織する地震予知連絡会は1978年、地震の観測を強化すべき場所として全国8カ所を「特定観測地域」、2カ所を「観測強化地域」に指定し、神戸市も特定観測地域に入っていたのです。
活断層が多く、直下型地震の発生が懸念されたためですが、広く知らされてはいませんでした。
周知されていれば家具を固定して備えるなど、被害がより小さくなっていただろうことは想像に難くありません。知らなかった、知らせていなかった。どちらの側にも痛恨の出来事でした。
そうした反省から、阪神大震災後に政府の地震調査研究推進本部と地震調査委員会が設けられました。地震研究を統括し、研究成果を社会に役立てるためです。
今回、能登半島地震を起こした可能性が高い海域の活断層は既に知られていました。2013年からの国の調査プロジェクトでは、この断層がM7級の地震を起こす可能性があるとされ、北陸電力志賀原発の安全評価でも影響が議論されていました。ただ、広くは説明されていません。
地震調査委は17年から、日本海沿岸の活断層が地震を起こす確率計算を順次進めていますが、計算には時間がかかる上、存在が分かっている断層も計算終了まで確率は公表されません。能登半島沖の活断層は公表が間に合わず、結果的に阪神大震災と同じ轍(てつ)を踏むこととなりました。
◆被害小さくするために
地震調査委が公表する活断層の地震発生確率は、例えば「30年以内に20%程度」のように、30年が基本です。同委では、人生設計を考える期間として30年が適当だからと説明しています。確かに30年もたてば世代も代わります。
阪神大震災の教訓を継承するために設立された「人と防災未来センター」(神戸市)は昨年、震災を語り継ぐ人たちの世代交代を見据えた「語り継ぎ探究サロン」を5回シリーズで開きました。
震災の記憶がない第2世代の語り部を招いたり、被災者の手記を基に朗読したり、東日本大震災の語り部活動と連携したり、語り継ぎの新しい方向を探りました。
確率計算に固執する地震調査委の活断層評価と公表のあり方には地震学者や防災教育の研究者からも疑問の声が根強くあります。
来年は阪神大震災30年。発生当時の思いに立ち戻り、推進本部も調査委も、探究サロンのように新しい方向を探るべきです。
きょうは多くの人が大震災当時を思い出し、亡くなった人たちに思いを巡らせることでしょう。
同時に、これから起こる地震の被害を少しでも小さくするためには何ができるのか、深く考える日でもあるべきです。能登半島地震の被害の大きさを目の当たりにしてその思いを強くしています。
大阪万博“ムダの象徴”木造リングは仮設住宅4000戸分 高まる「リソースを被災地に」の声
「日刊ゲンダイ」2024/01/16
という声にも納得です。
今回の能登地震における初期対応の遅れが指摘されていますが、「志賀原発」の重大事故につながる直前にあったのかもしれません。ドローン空撮も禁止されました。「原発」敷地内のようすが明らかになるのを恐れたのかもしれません。さらに「来るな」です。
「国土交通省は2日に「令和5年度緊急用務空域公示第5号」を出し、石川県の能登半島全域で、ドローンやラジコンなど無人航空機の飛行を原則禁止にした。 5日には「-公示第6号」を出し、禁止空域を北緯37度線以北の能登半島全域の陸地に指定。」
地震発生直後、テレビは「安全上の問題は確認されていない」という政府や北陸電力の発表をそのまま伝えてきました。
本当でしょうか!
14日のTBS系「サンデーモーニング」は、「志賀原発でトラブルも」とパネルを使って、「“想定を上回る”揺れ」「敷地に亀裂も」「一部の変圧器が壊れ、約2万リットルの油漏れ」と紹介。
「かなりヤバいところまで来ていて、動けなかった」のかもしれません。
久々の太陽です。
でも昼過ぎからまた雪がチラホラと。
阪神大震災の後にも、いくつもの震災があったにもかかわらず、その教訓が活かされてないのは、悲しい事です。
志賀原発、今後の詳細が気になります。