「しんぶん赤旗」2025年2月19日
農民運動全国連合会(農民連)女性部総会で、OKシードプロジェクトの印鑰(いんやく)智哉事務局長が、工業型農業への対抗策としてのアグロエコロジー(生態系を生かした農業)について講演しました。要旨を紹介します。
土は食料生産を支え、木以上に二酸化炭素を蓄えています。植物は光合成で炭水化物をつくりますが、炭水化物の4割を土壌中に流します。その炭水化物で微生物を呼び寄せ、ミネラルを集めてもらい吸収しています。
土壌中のこの共生を壊すのが工業型農業です。化学肥料でミネラルを与えると、植物は微生物を呼び寄せる必要がなく、余分な炭水化物を出しません。すると、その分を成長に使えるので、当面は植物がよく育ちます。
しかし微生物がいなくなると、病気に弱くなり、農薬も必要になる。工業型農業は、こうして遺伝子組み換えの種・化学肥料・農薬の3点セットで売り込んできます。
微生物のいる土は軟らかく、保水性も高まります。化学肥料を入れた土は硬く、すぐに水が干上がってしまう。そしてカラカラに乾いた土が、風に吹かれてなくなり、雨が降れば流れてしまいます。さらに化学肥料は地下資源からつくるので有限です。地下資源に頼らない農業を考える必要があります。
環境を壊す工業型農業への対抗策として発展してきたのが、生態系を生かし、土壌微生物の力を活用するアグロエコロジーです。決まったやり方を押しつけるのではなく、地域ごとに適したやり方を見つけます。生態系の重視で、気候変動もおさまり、生物多様性も戻ります。
ブラジルでは、2000年ごろからアグロエコロジーが全国に広がりました。工業型農業に取り組んでいた人たちは、債務に苦しみ離農する人が増えました。一方でアグロエコロジーに取り組んでいた人は年々生産性も増え、生き残りました。10年以上これを続けて、ブラジルは国としてかじを切りました。国連も力を入れ、欧州や米国でも広がっています。
日本の食料・農業・農村基本法は、工業型農業の推進が骨格です。さらに日本の農政は米国に隷従しています。米国産食料を買うために食料自給率を上げられないのです。
しかし、大規模に大豆やトウモロコシをつくることは環境負荷が大きく、輸入が止まれば日本の食は壊滅します。この構造を変えていくヒントがアグロエコロジーにあります。
わたしも多品種、少量生産です。
大規模な農地を持つと機械化や化学肥料、農薬、除草剤等に頼らざるを得ません。
大きな人口を維持するために、大規模農業も必要でしょう。
でも、小規模の農家を切り捨てるべきではありません。
農業をしたい人が規模にかかわりなく参加できる体制がなければ日本農業は衰退するでしょう。