八十八夜を過ぎると 農家では田植えの準備が始まる
田圃には水が張られ
畔も平鍬で綺麗に塗り上げられる
このころになると 村に燕がやって来る
彼等は家々の軒に良い場所を選んで巣作りを始めるのだ
場所は軒の一番奥に作るのが多かったが
何処の家も燕の巣の位置を指定するかのように
適当なところに板を打ち付けていた
燕が巣を作りやすくする心遣いでもあろうが
入口の真上の門灯あたりに作られると
糞公害で酷い目にあうかただろうか・・・
燕は虫を食べるという事で むしろ巣作りするのは歓迎されたようだ
信州の厳しい冬が過ぎると 春が一気にやって来る
梅も桜も何もかも余り日をおかずに一斉に咲くという感じなのだ
ある日ふと村の通りを閃光のように 飛んでくるものがあるのに気付く
燕がやって来たのだ
その中の一番い(つがい)が軒に来て巣作りを始める
夏の時期だから 玄関の戸を開けておくと
家の中に飛び込んできて居付いてしまったりもする
我が家の玄関部分は15畳の広さで
その中の8畳分がコンクリ-トの三和土になっていた
そこで この玄関の天井の桟に小さな板を打ち付けてやって 巣作りをさせた
次の年になると 定宿を知っているかのように
気が付くとちゃんと住人ならぬ住燕やってくるのである
前年飛び立って行った燕が帰ってくるのだと聞いたが
そう信じて良いと思う
-続-
☆昔はいろんなものと共同生活をしながら お互いの利を分け合っていた
燕のために板を打ったり 入り口を作ったり
動物は動物の縄張り
人間は人間の縄張り
お互いの世界に足を踏み込むことはなく
みんな共存してたのにね・・・
何処の家にも 軒先に燕の巣があった
そういえば 今はいないけど
ミイばあの駐車場に燕に巣があって
良くヒナがかえっていたっけ