ころほひの かほをかぶりて わらふ雉 夢詩香
*「ころほひ」とは、「当代」とか「今のご時世」とかいう意味がある古語です。
要するに当節流行の顔をかぶって、雉のように派手な格好している人が笑っている、という意味です。
雉には失礼ですが、その姿が鶴に比べれば派手なので、使わせてもらいました。
テレビを見ると、似たような顔やスタイルをした美人が踊っていますね。流行ばかり追いかけていると、服も髪形もまた似たようなものになる。個性というものが全くないわけではないが、それが妙にしょぼいものになっている。
彼らの希望はただ一つなのだ。「他人」という、自分とは全く違う、よいものになりたいという。
その他人というもののすがたが、あれなのです。何もかも、人まねで作るから、ああなるのです。派手にとんがっているが、妙に画一的だ。
彼らは、個性的だということを尊重しながらも、他人と同じことをしていることに、安心を感じるらしい。みんなと同じことをしていれば、馬鹿にならないですむと、思うらしい。
だがそれも、目が覚めてみれば、むなしいことだ。
流行の美人の正体がわかれば、もうそれは美人ではない。
テレビの中の人はまだやっていますが、もうとっくに古い時代のものになっていることを認めたくなくて、無理にそれがいいのだということにしてやっている。なぜなら彼らは、ああいう方法しか知らないのです。今まであったものを研ぎ澄ませるか、馬鹿に発展させて、ヴァージョンアップさせるという方法しか知らないのです。
それではどんなにがんばっても、新しいものは創れない。
新しいものはいつも、それまでにあったものの殻をやぶって、出てくるものだ。それまでの価値観を全く覆す形で、来るものだ。
それは時に、古い時代の中では鬼子のように見える時もあるのです。自分を滅ぼしてかかる悪魔のようにさえ見える時があるのです。
なぜなら、それは全く違うものだからです。
新しい時代を産む子は、古い時代の人々に、最も憎まれるのです。絶対に、売れる芸能人のようにもてはやされることはない。