さいはひの 子をさづかりて 蘇鉄の木 夢詩香
*子供が幼稚園児だったころは、毎日幼稚園に送り迎えしていました。幼稚園とか小学校とかには、必ず校庭に蘇鉄の木が植えられていますね。どういういわれがあるのか知らないんだけど、どこの学校にもなんだか必ず蘇鉄があります。
だから蘇鉄の木を見ると、学校を思い出します。
子供が学校に通いだす頃になると、その子の個性がはっきり見えて来て、それがなんだかうれしかった。不思議な感じがしたものでした。確かにこの子はわたしのおなかから生まれてきたんだけど、考え方とか、感じ方とかが、まるでわたしとは違うってことがおもしろかった。
子供のくせに一人前の口をきいてくる時なんか、かわいくてしょうがなかった。
蘇鉄の木を目指して、幼稚園に毎日あの子を迎えに行くことが、幸せだった。
今その子は、反抗して、わたしとあまり口も利かないんだけど、その頃の思い出があるから、どうしても憎く思えない。愛してしまう。どんなにがんばってでも、なんとかしてやりたいと思う。
どうしたらいいかなんて、ほんとはまるでわからないんだけど。子供の心って難しいから。でも、何とかしてみようって思っています。わたしも一応親ですからね。
わたしとあの子は、わたしはあまり似ているように思えないんだけど、人様から見たら、なんだかとても似ているそうです。そうかなって思って、よくあの子を見てみる。そういえば、顔つきなんかはやっぱりわたしに似ているかも。背丈は夫の方に似ているけど。
親子って不思議だな。あの子がわたしに背くのは、自分と似ているからなのかもしれない。