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「物語 フランス革命」安達正彦著 中公新書 920円
面白かったです。
第1に著者の見解が随所に述べられており、単なる歴史的経過の解説に終わっていない事。第2に悪政に対する民衆の蜂起という単純な視点ではなく、歴史的な必然性として、全体的・発展的に描いている事。第3に個々の人物描写が時代が生み出した人間として、生き生きとしていることです。
レミゼラブル
不破哲三さんの、昨年の古典講座の「マルクス・エンゲルスの多数者革命論」が前衛2012年5.6.7月号に掲載され、初期に革命論は「レミゼラブル」の小説に出てくる革命のように、民衆の不満の爆発として、その中で、民衆が鍛えられ本来の目的に近づいていく。フランス革命を念頭に置いていた。
その後、多数者自身が目的を理解してこそ社会変革の道が開かれるー多数者革命へと発展しています。
もう少し、詳しくフランス革命を知る本がないかと、本屋で探していたら、この本にぶつかりました。「革命が勃発した1789年の時点では、王政を廃止しようなどと思っていた人はフランス中にひとりもいなかった」ルイ16世は「実際はわずか一票差できまった」その後著者は死刑廃止論を展開しています。この辺がこの本の魅力の一つです。
フランス革命の歴史的役割
「フランス革命は万人平等の社会を打ち立てるための革命ではなく王と貴族に代わってブルジョアジーと呼ばれる富裕市民層が新しい支配者となるべき革命だった」とフランス革命の歴史的役割を述べています。
エンゲルスは著書「空想から科学へ」の中でフランス革命について「この理性の王国はブルジョアジーの王国を理想化したものにすぎなかったこと」と明快です。
日本でも革命権の行使
なお、不破哲三さんは、古典講座の中で、日本の歴史も新しい支配者による革命権行使の歴史だったとして、頼朝からはじまる、封建制度への権力闘争の歴史だったこと、
権威を他に頼る、不甲斐な権力者たち
「自分の支配権の根拠付けを別のところに求めないと落ち着かないというのは、弱気というか、日本の支配層の情けないところでしょう」と書いています。また、明治維新では「統治権の根拠を神話に求めるしかなかったのです」と書いています。
今日でも、アメリカという外圧や財界という資本のもとでしか政治ができない。仕組みが、マスコミも一体となって作られ。極右勢力の助けを借りなければならないところに、支配の脆弱性があるのではないでしょうか。