『弁護人』
韓国へ行くと時間を見つけて映画を見ることにしています。今年は1月に「弁護人-
主演ソン・ガンホ」5月に「逆鱗-主演ヒョンビン」7月に「良い友達-主演チソン、チュ・
ジフン、イ・グァンス」を見ました。韓国語を学んでいるとはいえ、未だにどの程度わかっている
のか、明確に自分でその割合が掴めるまでにも至っていない拙い理解力ですが
映画館へ行き、数ある上映作の中から面白そうなものを選んで、観賞し実際に
面白かった時の楽しみや、自分の選択へのささやかな満足感を感じて楽しんでいます。
『弁護人』は一説によると故ノ・ムヒョン元大統領を、モデルにしたものだと云われて
います。いつも早朝割引時間帯は観覧客がパラパラッと数える程度の人数ですが、
この時はいつもと違って結構人が入っていて、観客の年代もいつもはあまり目立た
ない中年層の女性たちの姿も結構目につきました。
故ノ・ムヒョン元大統領と云うと、5年前の滞在時に彼の死で悲しみに沈む、たくさんの
人々の姿に遭遇したことが思い出されます。主要な街角には焼香所が設けられ、道行く
人々が故人の冥福を祈る為に立ち寄っていました。丁度今年4月のセウォル号事故の
後、街頭に黄色いリボンが結ばれたのと同じように~。又当時私が良く閲覧していた
俳優の韓国HP掲示板にも、俳優とは全く縁のない彼の死なのに、その死を悼み冥福を
祈る記事がたくさん上がり、HP管理者から削除されることもありませんでした。きっと
それぞれがそれぞれの属するコミュニティで、哀悼の意思表明をしたのだろうと思われ
ます。韓国の人々にこよなく愛されていたらしい彼の最後の姿を見た私としては、彼を
忍んで映画を見に来る人が多いのだと思ったのでした。
主人公のモデルや事件の素材は事際にあったことに基づいていますが、映画の内容は
フィクションだそうです。
あらすじは苦労して独学の末、司法試験に合格した主人公が、不動産関係専門の弁護士
として開業し、学閥もなく同業者からは差別と蔑視を受けながら、お金になる仕事を
がむしゃらに引き受け、その道で成功し、建築大手の顧問弁護士としてスカウトを受ける
までになっていきます。その一方苦学中に無銭飲食をしたクッパ店の女主人とは謝罪し
親しく交流するようになります。
そんな中時は丁度80年代、韓国で民主化運動が激しく展開され、軍事政権による弾圧も
激化して、クッパ店の大学生の息子が事件に巻き込まれます。国家保安法違反容疑を
でっちあげての逮捕に、弁護の引き受け手を見つけられないクッパ店の女主人の切実な
頼みで、面会の付き添いをした主人公は、ひどい拷問を受けた息子の信じられない姿に
弁護を引き受けることを決心し、やがて人権派弁護士として目覚めて行きます。しかし
裁判は敗訴、自身もそれに関連し逮捕され、被告人の立場になるなど現実は厳しいですが
最後には彼を応援する弁護士仲間も生まれ、諦めなければ展望は開けると明るい未来を
期待させてくれます。
私は暴力団の抗争場面等暴力の応酬場面が多い映画や戦争ものなどは好みません。
この2・3年暴力的場面、それも単純な乱闘でなく、ナイフでえぐり殺したり、想像もできない
凄惨な場面が好んで表現されている感がありました。2013年の春、「新世界」という、
題名から受けたイメージに期待が持てたため、選択を誤って見た映画があります。
5分と置かずナイフで差し合う場面が出て、手で顔を多いながら時々指の隙間から
スクリーンを眺め、切り合いが終わったのを確かめてから画面を注視する、なんて
見方をしたりしました。見たくなければ途中で出ればいいのですが、折角新しい映画を
見られるチャンスを得たので、どの程度理解できるか最後までストーリーを追ってみたくて
途中で出られませんでした^^;
ただあまりに生々しい記憶を早くリセットしたくて、翌日は違う作品を見に出かけなければ
なりませんでした。
「弁護人」はそうした暴力的な、リアルで生々しい場面の連続で、展開していく映画作りから
傾向が変わるのかなと思わせてくれたのでした。(年に何十本という映画が封切られているであろう中、
たった数本で傾向を語るのは大胆を通り越してそれこそ乱暴以外の何物でもありません。韓国映画に造詣深い方がいらしたら
噴飯ものの考えだとは思いますが、私の個人的な感想ですからお見逃しください)