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さて、予てより当家には4頭の越冬サナギが居り、何故か1頭にだけ名前が付いていた。
その名を"御拾い"といった。
なぜなら、彼は終齢幼虫の時、蛹化するための最適の場所を求め、ベランダの手すりを這い回っていたが、何を勘違いしたのか、外壁の1尺近い厚みがある銀色の金属カバーの上を、外界へ向かって嬉々として直進し、そのまま真っ逆さまに9階から落ちた。
まさか落ちはすまい、しかし、あの元気なスピードのまま進めば落っこちるのではなかろうか…などと思って彼の挙動を見守っていた私は、愕然として、とはいえ厳然とした自然のものの成り行きを、悄然として受け入れる覚悟はできていたので、諸行無常、南無阿弥陀仏…と唱える雲水のように、偶々室内にいた家人にそう告げた。
淡々として諦めのよい私とは違い、情の厚い家人は、事の顛末を聞くと、突然玄関を飛び出していった。
どうしたのだろう、バタバタして…と、相変わらず私は察しが悪かったのであるが、なんとベランダ真下の地上階二輪車置き場へ青虫救出に向かっていたのだった。
そんな訳で、九死に一生を得たアゲハの終齢幼虫は、家人に拾われ、何事もなかったかのように檸檬の樹に戻ると、ほどなく蛹化した。
2021年10月24日のことであった。
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☝2021年10月28日
十数メートルにも及ぶ空中をダイブして地面に墜落して、一体まともなサナギになれるのだろうか…と案じていたが、数日経つとすっかりほかのサナギと遜色ない蛹になって2022年を迎えた。
そも、蛹の殻の中はマントル状の流動体になるのだから、落ちてひしゃげても差し支えが無いのかも知れなかった。
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☝2021年12月31日
果たしてオヒロイくんは、無事成長して、秀頼君になれるだろうか…というのが、このじゅうの私の心配ごとでもあった。
第一、あまりにも無防備に陽の当たる場所で蛹になってしまったし、ということは外敵の野鳥に発見されやすく、餌として啄まれる危険性に満ち満ちている。
案じれば案じるほど、彼は悲運の豊家二代目に似た特質を持っているのだった。
暖冬が続いていたここ数年になく寒い正月だったが、3月になって急に暖かい日が続き…ひょっとしてまたまたそそっかしいウッカリ者の我が家のさなぎどもは、勘違いしやしないだろうな、こんなに早い時季に羽化してしまったら生涯の伴侶に出会えないではなかろうか…という、またそれが私の心配ごとの種ともなった。
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3月23日、さなぎ近影。
慌しく年度末の行事日程に追われながら、28日月曜日の朝。
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レモンの葉陰にアゲハチョウが…こんな時期に卵を産みにお母さんが来るものだろうか、と矢張り察しの悪い私は、そんな一瞬の間をおいてから、蛹が羽化したのだと初めて気が付いた。動顛していたのである。
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強風にあおられながら、今ではヒデヨリくんと名を変えたお拾いが、懸命に網目を登ってゆく。
まだ羽化したばかりの翅は伸び切っておらず、風の脅威に晒されて、ぺなぺなとはためく。
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30分ほども屋上の軒の際で風をこらえていただろうか、やおら、翅を大きく上下させると、秀頼は青空に飛んだ。
https://youtube.com/shorts/ZliM_7yxl1E?feature=share
その名を"御拾い"といった。
なぜなら、彼は終齢幼虫の時、蛹化するための最適の場所を求め、ベランダの手すりを這い回っていたが、何を勘違いしたのか、外壁の1尺近い厚みがある銀色の金属カバーの上を、外界へ向かって嬉々として直進し、そのまま真っ逆さまに9階から落ちた。
まさか落ちはすまい、しかし、あの元気なスピードのまま進めば落っこちるのではなかろうか…などと思って彼の挙動を見守っていた私は、愕然として、とはいえ厳然とした自然のものの成り行きを、悄然として受け入れる覚悟はできていたので、諸行無常、南無阿弥陀仏…と唱える雲水のように、偶々室内にいた家人にそう告げた。
淡々として諦めのよい私とは違い、情の厚い家人は、事の顛末を聞くと、突然玄関を飛び出していった。
どうしたのだろう、バタバタして…と、相変わらず私は察しが悪かったのであるが、なんとベランダ真下の地上階二輪車置き場へ青虫救出に向かっていたのだった。
そんな訳で、九死に一生を得たアゲハの終齢幼虫は、家人に拾われ、何事もなかったかのように檸檬の樹に戻ると、ほどなく蛹化した。
2021年10月24日のことであった。
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☝2021年10月28日
十数メートルにも及ぶ空中をダイブして地面に墜落して、一体まともなサナギになれるのだろうか…と案じていたが、数日経つとすっかりほかのサナギと遜色ない蛹になって2022年を迎えた。
そも、蛹の殻の中はマントル状の流動体になるのだから、落ちてひしゃげても差し支えが無いのかも知れなかった。
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☝2021年12月31日
果たしてオヒロイくんは、無事成長して、秀頼君になれるだろうか…というのが、このじゅうの私の心配ごとでもあった。
第一、あまりにも無防備に陽の当たる場所で蛹になってしまったし、ということは外敵の野鳥に発見されやすく、餌として啄まれる危険性に満ち満ちている。
案じれば案じるほど、彼は悲運の豊家二代目に似た特質を持っているのだった。
暖冬が続いていたここ数年になく寒い正月だったが、3月になって急に暖かい日が続き…ひょっとしてまたまたそそっかしいウッカリ者の我が家のさなぎどもは、勘違いしやしないだろうな、こんなに早い時季に羽化してしまったら生涯の伴侶に出会えないではなかろうか…という、またそれが私の心配ごとの種ともなった。
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3月23日、さなぎ近影。
慌しく年度末の行事日程に追われながら、28日月曜日の朝。
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レモンの葉陰にアゲハチョウが…こんな時期に卵を産みにお母さんが来るものだろうか、と矢張り察しの悪い私は、そんな一瞬の間をおいてから、蛹が羽化したのだと初めて気が付いた。動顛していたのである。
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強風にあおられながら、今ではヒデヨリくんと名を変えたお拾いが、懸命に網目を登ってゆく。
まだ羽化したばかりの翅は伸び切っておらず、風の脅威に晒されて、ぺなぺなとはためく。
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30分ほども屋上の軒の際で風をこらえていただろうか、やおら、翅を大きく上下させると、秀頼は青空に飛んだ。
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