2015年11月に厚生労働省が発表した「雇用の構造に関する実態調査」で調査が始まって以来初めて非正規社員が4割を超した事が問題となっている。政府は一億総活躍プランにより、同一労働同一賃金化をすすめようと意欲を示すも、いまだ具体的な中身は聞こえてこない。そんななか一冊の本が話題だ。安定していると思われがちな公務員のなかにも「非正規公務員」が多数存在し、その増加と格差は深刻化していることをデータで表した一冊だ。
3月6日のNHKラジオ第1「マイあさラジオ」のコーナー「著者に聞きたい本のツボ」に『非正規公務員の現在 深化する格差』(日本評論社)を著した上林陽治さんが出演した。同書は非正規で働く公務員の増加をうけ、深刻化する格差と無権利状態を検証しながら解決策を模索する専門書だ。
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■非正規公務員は「消耗品」と同じ?
現在非正規公務員は全国で約70万人。公務員の3人に1人が非正規だ。職種によっては非正規の方が多く、毎年増え続けているという。全国の自治体の財政は逼迫しており、正規公務員の数が急速に減っている。どの自治体も人件費は増やせないため非正規職員の賃金は、「物件費」として扱われているという。これは「コピー代」や工事に使う「砂利代」など消耗品と同じ科目だという。
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■「何年で雇い止めすればいいですか?」
正規の公務員と週あたり3分しか労働時間が変わらないにもかかわらず、賃金は2分の1から3分の1、年収200万に届かない人が多い。また彼らの労働者としての権利に対する扱いはひどいもので、上林さんのところにある自治体から電話がかかってきたという。その内容は「先生、非正規公務員に雇用継続の期待権を生じさせないためには、何年で雇い止めすればいいですか?」というものだった。長年勤務してきた非正規公務員を雇い止めした場合、損害請求の支払いを命じる判決を裁判所が出すようになり、訴訟リスクが増えたからだ。また社会保険の負担を避けるために、2カ月おきに雇用と解雇を繰り返す図書館もあるという。まさに「ブラック自治体」だ。
ハロワ職員がハロワに並ぶ ブラックユーモア化した非正規公務員の実態