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狭いベランダで育てているバラのこと、趣味のこと、トールペイントのことなどなんてことない毎日を書いていきます。

映画〈ドライブマイカー〉感想

2022-01-15 14:35:27 | 映画

今日は、映画〈ドライブマイカー〉の感想を書きたいと思います。

(あらすじ)

脚本家である妻の音(霧島れいか)と幸せな日々を過ごしていた舞台俳優兼演出家の家福悠介(西島秀俊)だが、

妻はある秘密を残したまま突然この世から消える。

2年後、悠介はある演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島に向かう。

口数の少ない専属ドライバーの渡利みさき(三浦透子)と時間を共有するうちに悠介は、それまで目を向けようとしなかったあることに気づかされる。

 

映画は三つのストーリーが混ざり合って美しくも重厚な内容となっています。

一つ目は、本筋である舞台俳優兼演出家の家福悠介と妻音との秘密を抱えた関係性のストーリー

二つ目は、音が性行為の最中に無意識に語る物語

三つめは、家福悠介が演出するチェーホフの〈ワーニャ伯父さん〉の劇中劇

前半はやや退屈(大体20%くらいの退屈度)、でもそれが後半の問題が露呈する場面を強く印象付ける役目を果たしています。

 傷つくことを恐れて妻の音の心の中に入り込めない家福悠介

夫のその逡巡する心のうちを知っている音ですが、ある日遂に夫に秘密を告白しようとします。

関係性が崩れてしまうことを恐れて帰宅を遅らせる悠介

深夜に帰宅した悠介は、倒れている音を発見します。

 

時が流れて、広島で開かれる演劇祭に参加した悠介は、ある過去を持つ若い女性ドライバーみさきと出会います。

みさきは、悠介の宿と練習所を往復するドライバーとして雇われています。

悠介の愛車サーブ900で共に過ごすうちに、悠介はみさきの過去を知ります。

母一人子一人、夜の仕事のために中学生のころから母を駅まで車で送迎していたこと

母から暴力を振るわれていたこと

震災で母を亡くしたことなど。

 

さて、ここで演じられるチェーホフの〈ワーニャ伯父さん〉ですが

いろいろな国の俳優がそれぞれの国の言葉で役を演じるという一風変わった手法で演じられます。

日本語、韓国語、北京語、英語、そしてそこには手話も交じります。

この手話で演じられるシーンがとても美しく心に響きました。

この劇の練習風景にも長い時間が割かれていますが

劇を作り上げる過酷さと楽しさを十分に堪能出来てとても興味深かったです。

 

主役のワーニャを演じるのは家福悠介であろうと、皆が思っていたのですが

その役は悠介の指名により、年若い、それも音と不倫関係にあった高槻(岡田将生)が演じることになります。

何かと問題を起こしそうな雰囲気の高槻

上手く役柄をつかめなくて家福悠介に絡んできます。

「どうして僕がワーニャなんですか、家福さんが演じればいいじゃないですか。」

「チェーホフは怖い、チェーホフを演じることで僕の中のすべての物が引きずり出されてしまう

もう、それが僕には無理なんだ、できない。」

 

その高槻が、何も知らないふりをして(音と高槻の不倫)をやり過ごす家福悠介を問い詰めるシーンがあります。

「誰かを知ろうと思ったら、先ず自分の心の内を覗いてよく知ることが大事なんじゃないんですか。」

そこも長回しで撮っていて素晴らしいシーンでした。

とにかく岡田将生君が上手い。

鬼気迫る演技でそのシーンだけもう一度見たい気持ちにさせられました。

そこで家福悠介は、音のいろいろな男性との不倫を黙って見過ごしていた自分

音との関係が壊れることに耐えられなくて正しく傷つかなかった自分にやっと目を向けます。

 

そんな高槻がとうとう暴力で人を殺してしまいます。

演劇は中止あるいはワーニャを家福悠介が演じて開催するの決断を迫られる悠介

二日の猶予を与えられて、思わず悠介はみさきの故郷である北海道に連れて行って欲しいと

みさきに頼みます。

北海道まで行く道すがら、みさきは、自分が母を救えたはずなのに救わなかった

そんな自分を責め続けている心の内を悠介に話します。

妻を救えたはずなのに救えなかった自分、母を救えなかったみさき

葛藤を抱えながら苦しむ二人

北海道のみさきの生まれ故郷でそんなみさきと自分はこれからも生きていかなければならない

きっと、大丈夫だと、みさきを抱きしめながら叫ぶシーンには思わず涙が流れました。

 

始まりから終わりまで一貫して流れている確固たる信念

それを一言で言い表すことはできませんが、濱口竜介監督(脚本も)の持っていらっしゃるぶれない心の軸が素晴らしくて

これからもよい映画を作られていくことだろうと感じました。

生半可な心根では撮れない映画だったと思います。

 

日本の映画がゴールデングローブ賞をいただけたことが心の底からうれしいです。

 

家福悠介とみさき

このドライビングシーンがたくさん出てきます。

高槻が捕まってしまったので見られなかったのですが

岡田将生さん版のワーニャも見たかったです。

演技が本当に上手かった。

フィルマークスで、気絶しそうなほど上手かった、とレビューしている人がいて同感と思いました。

手話で演じられたソーニャ

韓国の女優さんみたいでしたが、雰囲気があって流れる様な手の動きが美しくて素晴らしかったです。

 

書く機会が上手く見つかりませんでしたが

音が寝物語で語るストーリーもすごく面白くて

それで一つ映画が出来そうでした。

この映画に取って重要なストーリーだったので書ければよかったのですが。

文章力がなくてスミマセン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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