受刑者たちが自らの娘を招き、ダンスパーティーを催す更生イベントの様子を追ったドキュメンタリー。プログラムは彼らに父親の責任を自覚させ、再犯率を5パーセントにまで抑える実績がある一方、長年に渡り父親不在の環境で育った娘たちには複雑な想いが募る。映画は刑期満了まで数ヶ月〜30年と幅のある受刑者たちの罪状を明かすことなく、彼らの贖罪にのみ注目していく。プログラムの参加者全員が黒人であることに注目してほしい。面会すら従量課金サービスと化す“刑務所ビジネス”が、黒人への差別と偏見から機能していることはエヴァ・デュヴァネイ監督の『13th』でも看破されていた。
本作はそんな刑務所の現状をジャーナリスティックに描く一方、父を想う少女達の姿をリリカルな映像美で綴っている。5歳の少女オーブリーの健気さは涙を誘うが、3年という粘り強い取材を続けた監督アンジェラ・パットン、ナタリー・レイは彼女が多感な時期に差し掛かるにつれ、父への言葉を失くしていく現実の過酷さからも目を逸らしていない。本当の物語はこの映画が終わった後、彼らの出所後から始まるのだ。
『ドーターズ』24・米
監督 アンジェラ・パットン、ナタリー・レイ