長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『セキュリティ・チェック』

2025-01-01 | 映画レビュー(せ)
 空港を舞台に『ダイ・ハード』と『フォーン・ブース』を掛け合わせたクリスマス・スリラー…安易な企画書が目に浮かぶようだが、“普通のハリウッド映画”が枯渇した2024年、『セキュリティ・チェック』は貴重な1本かもしれない。公開初週の3日間で大金を稼がなければハリウッドは映画に価値を見出さなくなってしまった。週末の2時間、娯楽を供給してくれるポップコーンムービーは今やストリーミングの広大なアーカイブに漂うばかりだ。『ジャングル・クルーズ』『ブラックアダム』と大手ビッグバジェットを任されるまでに成長したジャウム・コレット=セラが久しぶりにジャンルムービーへと帰還し、職人技を披露する本作は週末の気だるい時間を十二分に埋めてくれる。

 クリスマスイブ、帰省客でごった返すロサンゼルス国際空港(Lax)は空港職員が1年で最も多忙を極めるハイシーズンだ。保安検査官のタロン・エガートンが苛立つ乗客に睨まれていると、持ち主不明のイヤホンが運ばれてくる。さぁ、ゲームを始めよう。AppleTV+のTVシリーズ『ブラック・バード』で受けの芝居の上手さは実証済みのエガートンがサスペンス演技で奮闘し、ポーカーフェイスがコメディにもスリラーにも転用できるジェイソン・ベイトマンが恐るべきテロリストを演じる。創意工夫の足りない脚本をセラはそのまま演出しているが、脇にディーン・ノリス、ローガン・マーシャル=グリーン、ダニエル・デッドワイラーまで揃えてもらえれば十分だろう。セラには脇目を振らず、ジャンルを突き進んでほしい。


『セキュリティ・チェック』24・米
監督 ジャウム・コレット=セラ
出演 タロン・エガートン、ジェイソン・ベイトマン、ソフィア・カーソン、ダニエル・デッドワイラー、ローガン・マーシャル=グリーン、ディーン・ノリス

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