キャリー・クラックネル監督はいったいどうしてジェーン・オースティンをこんなに間の悪い、辛気臭い映画にしてしまったんだ?オースティン最後の小説『説得』は周囲の説得により結婚を諦めたヒロインが、8年を経て社会的に成功して財産を得た元カレと再びヨリを取り戻すというお馴染みのラブコメディだ。主演にはコスチュームプレイには珍しいダコタ・ジョンソンが迎えられた。ジョンソンはB級ロマンス映画『フィフティ・シェイズ・グレイ』シリーズでブレイクを果たしたが、その本分は意外やルカ・グァダニーノ監督『胸騒ぎのシチリア』『サスペリア』等ヨーロッパ映画にあり、この手の映画にはどうにも水分が多い個性である。『フリーバッグ』よろしく画面のこちら側に話しかけてくる“第4の壁”モノローグがキマるためには、フィービー・ウォーラー・ブリッジ級のキレ味が必要だ。そして彼女を囲んだキャストアンサンブルは活気に乏しく、決して長過ぎはしない1時間47分のランニングタイムは本来の語り口ならあと15分は短くなっただろう。唯一、ナルシストな父親役リチャード・E・グラントが愉快で、彼はこの鈍重な演出を破ろうとアクセルを踏み込む様が伺えるのだが…。Netflixはこんな駄作映画ばかり買い付けているようでは、会員数の増加は見込めるワケもないだろう。
『説得』22・米
監督 キャリー・クラックネル
出演 ダコタ・ジョンソン、コスモ・ジャービス、ヘンリー・ゴールディング、ミア・マッケナ・ブルース、リチャード・E・グラント
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