長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『少年の君』

2021-08-17 | 映画レビュー(し)

 中国映画は観測外ということもあって、ここまで垢抜けている事に驚いた。高度経済成長を遂げる中国だが、それが人の心をないがしろにし、弱者を切り捨てていくのは既に日本も見た光景だろう。苛烈な受験戦争に生きる少女と、暴力に明け暮れるストリートチルドレンの少年が出会い、社会の底辺で身を寄せ合っていく。美しい瞳を持つ主演の2俳優がその危ういまでのピュアネスを輝かせ、共に頭を剃り上げ、身も心も一心同体となる姿に息を呑んだ。

 中国では劇中で描かれるような陰湿なイジメが社会問題となっており、本作はその抑止を目的に作られている事がエンドロールで語られる。社会を啓蒙する重要な試みだが、過剰な受験戦争を根本的には批判しておらず、アウトローに法の制裁を課すことに相当な時間をかける終盤の展開はいささかくどく、"官製っぽさ”も感じる。アメリカのアカデミー賞は本作に国際長編映画賞のノミネートを与えているが、『ムーラン』『ゴジラvsコング』といい、わかっていない。


『少年の君』19・中
監督 デレク・ツァン
出演 チョウ・ドンユイ、イ・ヤンチェンシー

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