夏休み中の子どもたちを対象に行われている演劇ワークショップ“シアター・キャンプ”。赤字経営が続く中、今年度の開校を前にして校長がまさかの昏睡状態に。果たして残された講師たちは無事、3週間後の本番を迎えることができるのか?
傑作TVシリーズ『The Bear』(邦題『一流シェフのファミリーレストラン』)のクレア役で注目を集めたモリー・ゴードンとニック・リーバーマンが共同で監督を務めた本作は、残念ながら彼らの若さを理由に看過する事ができない。演劇映画にもかかわらず、何と稽古シーンが一切ないのだ。子どもたちを対象とした演劇ワークショップを舞台にしながら、ここには演劇制作という祝祭的な楽しさも、他者から受けるインスピレーションの喜びも描かれていない。陽気で風変わりな講師たちの“奇行”を描くコントに終始し、せっかくの物語設定をネタとして消費するに留まっている。まるでセリフを覚える事も稽古も嫌いなのに、舞台にだけは立ちたがる舐め切った素人役者のようだ。社会にコミットしない演劇人の描かれ方に僕はほとほとウンザリしている。零細ワークショップながらプロ志望の子どもたちが集まるという設定も始末に負えず、劇中の大人たちは人生を賭して演劇を続ける意味を誰1人教えていない。
クライマックスは「本番直前なのに曲が出来ていない」「本番直前なのに主役が降板」という、演劇フィクションおなじみのシチェーションが描かれる。もちろん、リアリティの欠片もあったもんじゃない。そもそも上滑りしたカメラ、編集によってモキュメンタリーとしてのルックも成立していないのだ。まったく!
『シアター・キャンプ』23・米
監督 モリー・ゴードン、ニック・リーバーマン
出演 ノア・カルビン、モリー・ゴードン、ジミー・タトロ、パティ・ハリソン、ネイサン・リー・グレアム、アヨ・エデビリ
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