淫らな饗宴、退廃と美の歴史を語り継ぐローマの街並み…アメリカ人のイタリアンコンプレックス、もしくはフェリーニコンプレックスは今なお色濃いのか。往年のイタリア映画の軽々しいパスティーシュにアカデミーは外国語映画賞を与えてしまった。本命不在だったとはいえ、構成力も同時代性もデンマークの『偽らざる者』が断然、上だろう。
とはいえ、ローマの圧倒的な“美”が画面を占拠し、強烈なヴィジュアルインパクトを放つ様には圧倒される。夜ごと繰り広げられる群舞を照らしたライティングはとろけるほど美しく、絶品なのだ。とうの昔に筆を折った作家の壮年の危機は『81/2』を彷彿とさせ、夢見のような不連続性と蠱惑が観る者を酩酊に誘う。
だが、身を任せるには演出の魔力が足りな過ぎる。『きっとここが帰る場所』のショーン・ペンに施された厚化粧のようにベタ塗りなソレンティーノのディレクションはフェリーニのパスティーシュとしても軽過ぎる。前作同様、感じが良いだけでセンスのない選曲、無為に拡がり続けるサブプロット…終幕、聖母が登場してからのコントみたいな展開にはとっとと夢が醒めてくれないものかと気が削がれてしまった。映画館の闇が明けた時には何の夢を見ていたのかすら思い出せなかった。
『グレート・ビューティー 追憶のローマ』13・伊、仏
監督 パオロ・ソレンティーノ
出演 トニー・セルヴィッロ
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