『クレイジー・リッチ!』『シャン・チー』など、幼馴染のダチとして登場する“笑かし役”のオークワフィナもいいが、『フェアウェル』で見せた誰もが抱える心の空洞を猫背で体現する“役者”オークワフィナも堪らないものがある。本作『クイズ・レディー』では家族と疎遠な移民二世役。職場では誰からも相手にされない空気扱いで、唯一の楽しみといえば毎晩、愛犬と一緒に長寿クイズ番組を見ること。30数年来見ているせいで、今や彼女の頭には知識がいっぱいだ。ある日、老人ホームに入っていたギャンブル依存症の母が脱走。それをきっかけに音信不通の姉が現れ、さらには母を追って借金取りまでやって来て…。
オークワフィナにとって先輩となる17歳年上のアジア系スター、サンドラ・オーが姉役に扮し、あけっぴろげなコメディ演技でオークワフィナの性格演技を際立たせている。脚本ジェン・ディダンド・アンジェロ、監督ジェシカ・ユーの語りは後半に向かうにつれギャグも弾けて快調。ウィル・フェレルが『バービー』に続いてここでも若手に胸を貸し、今や貫禄すら出てきたのは驚き。車窓や各地のランドスケープが足りないものの、アジア系女性2人が伝統的なアメリカン・ロードムービーのフロントラインを張れる良い時代になったものである。
『クイズ・レディー』23・米
監督 ジェシカ・ユー
出演 オークワフィナ、サンドラ・オー、ジェイソン・シュワルツマン、ホランド・テイラー、トニー・ヘイル、ウィル・フェレル
今回、長内さんが紹介してくれた『クイズ・レディー』、観てみました。Disney+に加入して毎日のようにアクセスしているのですが、この作品のこと、全然気づきませんでした。
結果、長内さんのおかげで、自分にとってこの作品が今年最高の長編映画となりました。
ラストまで低音の声で根暗なオークワフィナ(でもクイズ解答では彼女らしい素晴らしさ)とサンドラ・オーの、観客をイライラさせないギリギリを攻めたような陽性炸裂の演技と間のコントラスト!
加えて、ウィル・フェレルをはじめとする脇役全員が記憶に残る個性(故ポール・ルーベンスも含む)。よくある物語、だけれども優れたセリフとギャグの扱い方、堂々とした米国アジア人姉妹の可愛らしさをそっと魅せてくれる演出......。
よそ様のSNSにコメントしたことはありませんが、長内さんのブログを読まなければ観なかったであろう本作に出会うことができましたので、つまらない主義を曲げてでもお伝えしようと思った次第です。
ありがとうございました。これからもよろしくです!
そしてAppleTV+の番組の良さもさらにお伝えていただければ幸いです。シーズン3が決定したあの作品もサイコーですよね。
現在、個人的には小津安二郎ブームなのですが、配信時代を迎えて人種性別を問わずに才能豊かな俳優の新たな発見、そして過去の日本の俳優たちを気軽に観ることができるこの時代にも感謝です。その指針として長内さんのこのブログは助かりますよ(解説表現がいつも腑に落ちるのです)。今後も期待してます!