2023年の米俳優組合、脚本家組合のストライキによって供給不足に陥っているハリウッド。そのしわ寄せは既に洋画興行が壊滅に瀕している本邦においてより深刻だ。幸いなことにストリーミングにはまだ見るべき作品が幾つかあるものの、ほとんど宣伝もなく膨大なライブラリに並列化されれば、一部のマニアによる相互扶助のような情報共有なしに陽の目を見る機会はないだろう。
ましてやM・ナイト・シャマランがプロデュースする『キャドー湖の失踪』はネタバレ厳禁、全くの予備知識なしで見るからこそ楽しめる映画で、ここにはジャンルを書くことすら憚られる。1950年代に建てられたダムによって原生林と湿地帯に覆われたキャドー湖。近年、周辺地域では絶滅したはずの狼や蛾が目撃される異変が生じていた。ある日、8歳の少女アナが消息不明に。義理の姉エリーは行方を追って湿地帯の奥へと足を踏み入れる。その頃、湖でダム建設時の廃材を回収しているパリスは、急逝した母親がある発作に悩まされていたことを知り…。
これくらいでいいだろう。脚本も手掛けるローガン・ジョージ、セリーヌ・ヘルドの監督コンビは全く異なる2つの人生が重要な繋がりを持つことを観客に直感させ、巧みなストーリーテリングに意図的な綻びを生じさせることで大きな物語を描いていく。既に多くの前例があるアイデアではあるが、それを指摘するのは野暮というもの。湿地帯という特殊なロケーションによって生み出された家族の歴史は、思いがけずあなたの心を打つはずだ。
『キャドー湖の失踪』24・米
監督 セリーヌ・ヘルド、ローガン・ジョージ
出演 ディラン・オブライエン、エリザ・スカンレン、キャロライン・ファルク、ダイアナ・ホッパー、サム・ヘニングズ、ローレン・アンブローズ、エリック・ラング
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