長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ハイ・フライング・バード 目指せバスケの頂点』

2019-03-17 | 映画レビュー(は)

当然の如くスティーヴン・ソダーバーグもNETFLIX参入である。制限のない創作環境はメジャーとインディーズ、TVと映画を自由気ままに横断する万年映画青年ソダーバーグにとってまさに水魚の交わりであり、本作は何と全編iPhone撮影というのだから驚かされる。ブルーを帯びた美しいライティング、流れるようなカメラワークといつもと何ら変わりない作風なのだから弘法筆を選ばずという事か。但し、そんな人気監督の新作ですら数あるレコメンドと並列化されてしまうのだから、NETFLIXはホントにシネフィルには優しくないよなぁ、と思う次第である。

 物語はNBA選手を抱える大手スポーツエージェンシーが舞台だ。業界がロックアウト(労働争議)に突入して選手もエージェントも無収入になってしまう。アンドレ・ホランド演じる主人公は一計を案じて何とか業界の慣習に風穴を開けようとするのだが…。選手同士のツイッターを使った中傷合戦等、SNSを利用したミーム作りから、終いには「この映像をNETFLIXに配信させる」というセリフまで登場。バスケ業界の話だがこれはイノベイター(革新者)の物語であり、それはNETFLIXを指し、ソダーバーグ自身の事でもある。NETFLIX製作の『ROMA』がオスカー作品賞にノミネートされ、映画という定義について侃々諤々の議論がされる今日この頃、ソダーバーグは一足先に行ってしまっている印象だ。

『ムーンライト』第3幕が印象的だったホランド、『デッドプール2』『アトランタ』のザジ・ビーツというセクシーな気鋭俳優2人をトップにメインキャストが黒人で固められたソダーバーグ流“ブラックムービー”である事にも触れておきたい。


『ハイ・フライング・バード 目指せバスケの頂点』19・米
監督 スティーヴン・ソダーバーグ
出演 アンドレ・ホランド、ザジ・ビーツ、メルヴィン・グレッグ、ソーニャ・ソーン、ザカリー・クイント、カイル・マクラクラン、ビル・デューク

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