現代、ベテラン新聞記者の急逝にあたり追悼記事を書くことになったエリー(フェリシティ・ジョーンズ)は、遺品の中に情熱的な恋文を見つける。誰から誰へ当てたのかも判然としないラブレターを読み解くうちに、彼女は実ることのなかった悲恋を知る事となる。
1960年代と現在を往復する本作は致命的なことに物語の要となる不倫愛に色気が足りないどころか、これっぽっちも火照るものがない。人妻をシャイリーン・ウッドリー、新聞記者にカラム・ターナーと演技力に定評のある役者が配役されたものの、互いに全く興味がないかのような体温の低さで、これではジョー・アルウィンの演じる冷徹な夫とまったく代わり映えがしないではないか。
一方、現代パートで恋文の主を調べるフェリシティ・ジョーンズには映画を活気づけようとする華があり(スタイリングが可愛らしい)、ひょっとするとウッドリーと役を入れ替えた方が上手くいったかもしれない。監督のオーガスティン・フリッゼルは正統派のロマンス演出で『Never Goin'Back』『ユーフォリア』とは異なる職人ぶりを発揮しているが、映画の体温を上げるには至らなかった。
『愛しい人からの最後の手紙』21・英
監督 オーガスティン・フリッゼル
出演 フェリシティ・ジョーンズ、シャイリーン・ウッドリー、カラム・ターナー、ジョー・アルウィン、ベン・クロス、ナバーン・リズワン、ダイアナ・ケント
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます