太田駅から “特急りょうもう” に乗車する。浅草までは90分、乗客の大半は出張のビジネスマンのようだ。
6両編成は50%ほどの乗車率で太田駅を静かに滑り出して、東武鉄道呑み潰しの仕上げの旅は続く。
東武鉄道の最長路線で浅草をめざす。都会的な高架の伊勢崎駅は東武伊勢崎線とJR両毛線と分け合っている。
本線ではあるものの、特急の殆どは桐生線に流れてしまうので、太田までは各駅停車に揺られるのだ。
太田駅では新田義貞公が迎えてくれる。太田市は富士重工の企業城下町、日本を代表する工業の町だ。
高度経済成長期、安くてボリュームある「焼きそば」が工員さん達の胃袋を満たしたという。
今でも約80軒の焼きそば店が市内に点在し、この町のご当地グルメとして存在感がある。
駅から15分歩いて「もみの木」を訪ねる。ここのひと皿は、ジューシーな唐揚げを盛り付けてボリューミー。
近くに在る高校のラグビー部員の人気メニューだそうだ。
“特急りょうもう” の最初の停車駅は足利市、列車が近づくとオルゴール調の森高千里のメロディーが流れる。
渡良瀬橋で見る夕日を あなたはとても好きだったわ ♪ 駅前を渡良瀬川が流れ、モデルとなった橋が架かる。
渡良瀬橋を渡ると「足利織姫神社」がある。祭神は太古の昔より機織りを司る天御鉾命と天八千々姫命の二柱。
産業振興と縁結びの守護神は "恋人の聖地" として有名、8月7日までは「七夕まつり」で多くの恋人たちが訪ね来る。
ふたつ目の停車駅・館林では「分福茶釜」の狸たちが迎えてくれる。群馬は秋蒔き小麦の産地であり、
県内いたるところで「うどん文化」が花開いている。ここに名店有り、駅前の「花やまうどん」を訪ねる。
“分福茶釜の釜玉うどん” は、昔話「分福茶釜」にちなみ、加盟各店がそれぞれの趣向を凝らして提供している。
こちらの一品、冷やしうどんに豚肉と大根おろし、濃口の醤油ダレをぶっかけて旨い。
館林でほぼ満員となった “特急りょうもう” は 羽生で残った席を埋め、北越谷からの複々線を快調に飛ばす。
このまま浅草へと滑り込みたいところだが、曳舟から押上まで延びる1区間の支線を潰さないといけない。
この支線は東京メトロ半蔵門線へと乗り入れる都心へのゲートウエイ。終点の押上駅は半蔵門線の起点であり、
京成押上線と都営浅草線の起終点でもある。地上に出ると「東京スカイツリー」の天を突く深い青色が美しい。
浅草駅へは隅田川橋梁を渡り、半径100mの急カーブを15km/hの速度制限、車輪とレールを響かせて進入する。
東武伊勢崎線114.5kmの旅の終わりは、東武鉄道線の旅の終りでもある。
1931年、浅草雷門駅として開業した百貨店併設のターミナルビルは、日本のアールデコ建築と謳われた。
現在はネオ・ルネッサンス様式に再現されて、東武鉄道「呑み潰し」のゴールは美しくライトアップされている。
旅の終わりは多くの文豪たちに愛された「神谷バー」で一杯。店の代名詞とも云う “デンキブラン” で〆る。
優雅な琥珀色、ほんのりとした甘味、でっアルコール40度。こっれ調子に乗ったら大変なのだ。
東武鉄道・伊勢崎線 伊勢崎~浅草 114.5km
曳舟~押上 1.3km 完乗
<40年前に街で流れたJ-POP>
青春時代 / 森田公一とトップギャラン 1976