散居集落、残雪、桜の老木、ディーゼルカー、なんだかホッとする雪国の春の風景がある。
こんな風景の中に帰る田舎があったらステキだなぁなんて思う。北陸本線の旅の途中、城端線で呑む。
金沢駅のみどりの窓口、ダメ元で尋ねた「ベル・モンターニュ・エ・メール」の指定席。聞いてみるものですね、
最後の1席を手に入れる。たった530円の指定席に笑顔で「いってらっしゃいませ」と駅員嬢、旅はいいなぁ。
予定を変更して途中下車した高岡駅の2番ホーム、「美しい山と海」をフランス語で表した、濃緑のボディーに
ゴールドのラインを纏って、ちょっぴり高級感のある車両が乗客を待っていた。
砺波平野を南下する城端線、新幹線から乗り継ぎの乗客を迎えると、ほどなく農村風景の中に溶け込んでいく。
青々とした畑は植えたばかりの大麦だそうだ。地元の親父さんが教えてくれた。
カポっと鳴らして売店で仕込んだワンカップを開ける。沿線砺波の “若鶴” は旨味とキレ味ある辛口純米酒。
ひと箱で二度おいしい “ますのすし” と “ぶりのすし” の小箱、脂ののった鱒と鰤を肴に嬉しい楽しい朝酒だ。
「べるもんた」が砺波駅を出ると、車窓にはいよいよ散居集落の風景が広がっていく。
散居集落の島を浮かべた広大な耕地の海原を、濃緑のディーゼルカーが優雅にクルージングしていく様だ。
終点に近づくほどに、砺波平野を狭めていく左右の山並み、白い残雪がまだら模様の雪国の春。
高岡から1時間弱、静かな終着駅の車止めに行く手を塞がれた「べるもんた」は先行したタラコ2両と並ぶ。
撮る鉄ちゃんには良い絵になるのではないだろうか、濃緑と朱の共演が小さな終着駅を華やかにする。
城端は越中の小京都とも言われ今もレトロな町並みが残っている。朝酒で気持ちも軽やかに旧い町並みを巡る。
町並みの中心は真宗大谷派の城端別院・善德寺、開基450年来の山門・本堂・太鼓楼・鐘楼は県の文化財だ。
板張りの趣きある建物は城端曳山会館。ユネスコ無形文化遺産に登録された300年の歴史を誇る城端曳山祭、
曳山会館には祭に使用される城端塗と木彫刻や金箔で飾られた絢爛豪華な曳山が展示されている。
恵比寿、大黒天、布袋と、展示された曳山は美しくも迫力がある。
5月5日に行われる
城端曳山祭本祭、絢爛豪華な曳山巡行は一度見てみたいと思う。
越中の小京都を漫ろ歩いて城端駅に戻ってきた。昨秋は吉高由里子さん主演ドラマのロケ地にもなったね。
桜が見下ろすホームに2両編成のタラコがアイドリングしている。ローカル線の風景にはこの朱色が似合う。
気温が上がった午後は車内の扇風機を回して、心地よい揺れと優しい風に吹かれて城端線の旅は終わるのだ。
城端線 高岡〜城端 29.9km 完乗
<40年前に街で流れたJ-POP>
あまく危険な香り / 山下達郎 1982