▲ドキュメンタリー「雪ぐ人」
11月の初旬、産経新聞の産経抄に弁護士・今村核氏の訃報が載りました。
「今村核」という名前は初めて聞いた名前でしたが、有罪率99.9%の日本の刑事事件で、14件もの無罪を獲得している、冤罪事件では知られた弁護士だったようです。
11月終わり頃、弁護士の業務について調べることがあり、色々ネット検索をしていたところ、氏の名前と他に類を見ない業績がズラズラと出てきました。
そこで、氏と、無罪を勝ち取った2件の冤罪事件を詳しく取材したNHKのドキュメンタリー「ブレイブ 勇敢なる者」(2016.11.28 放送)をNHKオンデマンドで視聴の上、その内容をプロデューサーが書き起こした「雪ぐ人(佐々木健一著)」を購入し、読了しました。
今村氏の略歴
1962年12月8日生まれ。
陸軍幼年学校で教育を受けた厳格な父に命ぜられるまま、麻布中学校・高等学校を経て、東京大学法学部に進学する。
父は、終戦後に東京大学法学部に進学し、在学中に司法試験とキャリア試験に合格するも東レに就職。
プラスチック・合成繊維などそれまでの傍流部門を東レの稼ぎ頭に育て上げ、副社長にまで昇進した。
実社会における成功体験より、父の一般男子に対する評価基準は如何に金を稼げるか、であった。
そのため、社会の底辺にいる人達への視線はひどく冷淡なものであった。
一方的に自分の価値観を押し付ける父に反発した核は、大学進学時より家を出て下宿し、一度も実家に帰ることがなかった。
大学一年生の時、生涯の友となる四年生の先輩と出会い、彼に導かれ、ボランティア活動「学生セツルメント」に参加する。
その活動とは、貧困地域の住民と触れ合い、生活の向上を支援する社会運動であった。
核には、自分の父親に象徴されるような、巨大資本に虐められている人々を助けたいという気持ちがあった。
エリート意識の強かった核は、自分が頑張れば彼ら、「弱く生きさせられている人々」を救えると考えた。
「弱く生きさせられている人々」とともに闘う職業を模索した時、自然と弁護士を目指すようになった。
1989年、26才で司法試験に合格し、司法修習を経て、旬報法律事務所に弁護士の職を得た。
司法修習の時に感じた、刑事裁判に対する違和感、有罪か無罪か決めるのでなく、有罪であることを確認するにすぎないというという思いと、99.9%の有罪率の影にどれほどの冤罪が潜んでいるかに慄然とし、冤罪事件に積極的に取り組むようになる。
趣味は将棋でアマチュア四段の腕前である。
まだ若い(私のひとつ下)のに今年8月に亡くなったのだそうです。
外観はドラマ「99.9%」の松潤とは似ても似つかぬ容貌で、どちらかといえば、同じく冤罪事件を扱った今期のドラマ「エルピス」にチラッと登場した六角精児に極めて似ているように思いました。
ドラマ制作者が今村氏に寄せたのかもしれません。
政治家の亀井静香はよく知られたように死刑反対論者です、なぜなら警察官僚であった彼は、冤罪は確実に存在することを実感しているからでしょう。
NHKの番組も書籍も、なぜ冤罪が作られるかチラッと触れていましたが、我が身にも起こり得る、と考えると実に空恐ろしい気がします。