先日、TVでアラン・ドロンのインタビューを見た。 生身のアラン・ドロンの姿を拝見できるなんて、本当に久しぶり!
今年の初め、パリの高級ホテルで行われたインタビューらしいのだが、この時のドロン、御年82歳――かつての世紀の美男はいかに? と思うや、さすがに廃墟と化していたかも……。 でも、フォロロマーノとかパルテノン級の壮麗な廃墟であることは間違いなし!
そして、あの独特の冷たく輝く青い瞳は、昔のまま。「太陽がいっぱい」のトム役を演じた頃の、不吉な宝石を思わせる輝きなのである。
ナレーションで流れていた「アラン・ドロンは、俳優としても、一人の男としても非常に複雑な人物です」というコメントには、さもありなんという気持ちになった私。
このインタビューでは、ドロンが今までの長い俳優人生を振り返って、その時々の心情を語っていたが、意外だったのは、彼の「演技」というものに対しての深い情熱。
「私は役を演じたのではない、『生きた』のです」とドロンは言っていたが、俳優を天職とする情熱があったからこそ、映画史に残るいくつもの傑作に主演し続けてこれたのだろうと思う。
ドロンの映画は、正直、暗いものが多い。代表作の一つ「サムライ」はもちろんのこと、「暗黒街の二人」、「あの胸にもう一度」(マリアンヌ・フェイスフルがスイスからドイツに向かって、ドロン演ずる愛しの大学教授に会いにいくため、皮のスーツを着て、ハーレーを走らせるシーンが、魅惑的)、「パリの灯は遠く」などもそう。
これは、彼自身の家庭的に恵まれなかった生い立ちのせいもあろうけれど、あの非情な輝きを放つ瞳を作ったのは、17歳で従軍したインドシナ戦線の日々も原因しているのでは、などと私は勘ぐっているのである。
暗黒街とのつながりや、実業家としての成功も有名なドロン――彼の波乱万丈な人生には、数々の女優達との浮名の他にも、「あれ?」と思わせるエピソードを読んだ記憶がある。
それは、もう十年以上も前に読んだ、「砂漠の囚われ人 マリカ」という本。
60年代頃のモロッコでクーデターを起こした将軍の娘だったマリカ・ウフキルという若い女性が、自分や家族が砂漠の中の牢獄でずっと囚われていた日々を回想したドキュメンタリーなのだが、彼女達がついに牢獄から脱走した時、助けてくれたのはアラン・ドロンだったというのである。
彼女は、かつて社交界で知り合ったドロンにモロッコからの電話で救いを求めたのだった――この本で私は、モロッコという国の神秘的にも恐ろしい側面を知ったのだが、かつて知り合った美しい女性を助けたドロンも凄い。
そして、このインタビューを見ていたら、彼の知られざる面がまた一つ明らかに。何と、ドロンは大の愛犬家なのだそう。現在は、大型犬と一緒の一人暮らしだというのだが、彼の別荘の庭には、これまで飼った犬たち35頭のお墓がズラリと並んでいるという――「私の墓も彼らの隣りに作っています」というドロン。
「私は、偽善を憎みます。だから、犬たちを愛しています。なぜなら、犬は裏切りませんから」の言葉には、この華麗な人生を送ってきた大スターの隠された孤独が感じられて、何とも言えない気持ちになった。
犬が好きと知り、ちょっぴりドロンに親近感がわいたのだけれど、できるなら、彼が今一緒に暮らしているという犬の種類や名前も知りたいな。
ドロンさんの現在の愛犬は、Belgian Shepheed の「Julio」という犬です。
アラン・ドロンの愛犬について教えて下さってありがとうございます。
それにしても、ドロンのコアなファンの方にお会いできるとは……。先日のニュースで、ドロンが軽い脳出血のため、現在スイスで療養中と聞きましたが、この類まれなスターほどの輝きを持つ俳優は、現在のフランスにはいないですね。