ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

庭のマロニエ―アンネ・フランクを見つめた木―

2017-06-22 21:55:32 | 本のレビュー
 
「庭のマロニエ―アンネ・フランクを見つめた木―」 ジェフ・ゴッテスフェルド 作  ピ―ター・マッカーティ 絵  評論社

これも図書館で借りてきた本の一つ。 でも、一読したなり、宝物を見つけたような気分に。 それほど、内容も良質だし、文も絵も素晴らしいのです。

ただ、これは常々感じていることなのだけど、特に絵本などは書店で販売されているのは、有名なものか今風のごちゃごちゃした絵のものばかり。

こうした、深く心に残る隠れた名作こそを、読者に届けてほしいのに……。 その点、図書館は発行される書物を出版社の大小にかかわりなく、たくさん仕入れてくれるので、こんな掘り出し物に出会うことができるのですね。

さて、この絵本の内容を一口で言うと、主人公は、一本のマロニエの木。オランダの運河のそばの裏庭に立っていたマロニエが、強い印象を感じていたのは、黒い髪の生き生きした瞳の小さな少女――彼女は、ある日、ぷっつりと姿を消してしまいます。

そして、ある日、マロニエの木の裏にある建物に、こっそりと少女の一家は隠れ住む――少女こそアンネ・フランクだったのです。マロニエは、アンネの隠れ家での日々、その心情をそっと見守り続けるのですが、ある日、恐ろしい日が――。
誰か心ない者の密告で、アンネ達一家はナチスに連行されることに。

今でこそ、世界中の人たちが知っているアンネの物語ですが、こんな風に彼女を見守っていた木があったとは。余談ながら、このマロニエは、アンネがいなくなった後も長い歳月を生き続けますが、ある日とうとう強風に打たれて倒木してしまったそう。
この樹齢170年の木の芽は、世界中に贈られ、今もアンネの物語の生き証人として、若木として育ち続けているそう。日本では、福山市のホロコースト館にもあるそうで、ぜひ、このマロニエの木に会いたくなってしまいました。

 
そして、もう一つ惹きつけられたのは、絵本の挿絵。セピア色の描線で描かれた絵は繊細で、描かれたアンネも、実物とは似ていないようで、彼女を彷彿とさせる雰囲気があるのです
 久しぶりに、本棚から子供時代さんざん読んだ「アンネの日記」をひっぱりだしたくなってしまいました。

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