村田紗耶香の「地球星人」を図書館で借りて、読む。
村田さんの作品は、「コンビニ人間」しか読んだことはないのだが、今度の「地球星人」もシュールな味わいで、とても面白かった。
主人公は、自分を「ポハピピンポボピア星」からやって来て、地球人の間にまぎれて暮らしているのだと感じている少女、奈月。彼女は家族からも周囲の人からも「なんとな~く」疎外感を感じているのだが、自分によく似ていて、どこか植物質な感じのする従弟由宇と、幼い恋をする。だが、二人は会えるのは年に一回の夏、過疎地すれすれの山奥の祖父母の家で親戚一同が集まる時だか。
由宇も自分を宇宙人だと信じていて、自分の母星へ帰るための宇宙船を待っている。
彼らは自分たちの結びつきをより確かなものとするため、結婚式まであげるのだが、それが大人達にばれて、引き裂かれてしまう。ここまで読んで、次はどうなることかと思っていたら、あっという間に年月が飛んで、草深い「秋級(あきしな」の田舎から、千葉のニュータウンに場所も飛び、奈月はすでに結婚までしている。
しかし、大人になった今も、人間社会には溶け込めないものを感じている奈月。彼女にとって、人のいる社会は、「人を生産することを、無言のうちに強制する」人間工場であるのだ。自分が部外者であることを知られることを恐れつつ、その反面、人間工場の部品として生きるよう洗脳してほしいと願っている奈月。
彼女が伴侶に選んだのも、ネットのサイトで出会った、「肉体的接触をいっさい、おことわり」の青年。二人の奇妙な生活は、外には普通と見せかけながら、平和(?)に営まれているのだが、そこへ無人となった秋級の家に、従弟の由宇が一人住んでいると聞いた時から、はっきり不穏な旋律を奏で始める。
職を失った都会育ちの夫が、「今まで話に聞かされていた秋級の土地に行ってみたい。田舎は僕の憧れなんだ」と言いだしたことから、奈月は夫と共に、数十年ぶりに、山奥の家に足を運ぶのだが、そこで待っていたのは、由宇だった――。
どうですか? なかなか面白そうな話でしょう? この僻地の一軒家に勢ぞろいした三人は、互いに反発したり、好意を持ちあったりしながら、ついには「自分は、人間工場の部品ではない。ポハピピンポボピア星人なのだ」という認識を新たにし、裸で暮し、近隣の土地から野菜などを盗んで暮すようになる。実言えば、奈月は小学生の時、自分の通っていた学習塾の先生から、こっそり性的虐待を受けていたという過去を持っていた――その復讐のため、ある夜、先生の家に忍びこみ、先生を惨殺した。
その真相を数十年ぶりにかぎつけた、先生の両親が復讐のため、秋級の地までやって来たのだが、奈月たちは逆に彼らを殺してしまう。ちょうど腹が減ってたまらなかった奈月や由宇たちは、先生の両親の死体を「豚を解体するように」ノコギリで処理し、料理して食べてしまうのだ。
「……地球星人の肉はおいしかった」と結ばれている文……この素晴らしきショッキングな展開。ここまで来たら、異星人になるというより、人間やめなくちゃいけないよ///
これまで似た小説を読んだことがないためもあるのだけれど、とても面白かった。文章も密度が濃いとかアクが強いというのではなく、けっこうさらさらと読める。村田紗耶香――この作家って、本当にユニークな感性をしている。「コンビニ人間」といい、本人は一体、どんな人なのだろう?
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