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縛り首の木

2021-06-19 16:52:40 | 映画のレビュー

映画「縛り首の木」を観る。主演は、永遠の二枚目ゲーリー・クーパー。共演は、「白夜」や「カラマーゾフの兄弟」にも出ていたマリア・シェル。

実は、寡聞にしてこの映画のタイトルすら知らなかった私――でも、とても面白かった! こんなに面白く、好みにかなう映画を観たのは久々と言えるほどで、おかげでその日一日、とても充実していました。

これは、ジャンル的には、「西部劇」。西部劇って、やはり荒っぽく、何かと言うと、銃を取り出し、容赦なく人を殺すシーンが出て来るもの。そして、出て来る人物は、無法者の面影を背負ったヒーロー。

この「縛り首の木」もその典型から外れてはいず、主演のゲーリー・クーパーは、どうやら暗い過去を背負っているらしい流れ者の医師(ジョー・フレイル)。彼が、砂金を泥棒しようとして、撃たれた青年ルーンを拾い上げ、その罪を黙ったやる代りに、診療所の助手に雇うところから、物語がスタートするわけですが、何と言っても、ゲーリー・クーパーが格好いい!  あたかも死に急いでいるかのような、虚無的な雰囲気を漂わせている医師を好演しているのですが、彼の苦み走った美貌がまさにはまり役。

地の果てと言ってよい、西部へやって来た彼の前に広がっているのは、一攫千金を狙うべく各地からやって来た、人々が住む集落。多分、ゴールドラッシュ時代の西部というのは、本当にこんな風景があったのでしょうね。

そこでクーパーは、金のない家族からは無報酬で診療するなど、情に厚い面を見せますが、「赤ひげ」的善意の医師かと思えば、さにあらず。夜になると、酒場へ出かけ、荒っぽい賭け事に時間を潰しています。そこで、彼の過去がぼんやりと語られているのですが、「ずっと遠くの街に、腕の良い医師が住む大邸宅があった。だが、そこで彼の妻ともう一人の人間が燃え落ちた屋敷から発見された」という、何とも陰惨なもの。

事実、クーパーは酒場で「もう一度、家を焼くつもりか」と荒くれ男から因縁をつけられなどしています。

そんなある日、馬車が強盗たちに襲われ、たった一人娘が生き残る。その娘エリザベスを、集落の人々を手を分けて探すのですが、砂漠で発見された彼女は重い火傷を負い、視力も失っていました。そのエリザベスを治療のため、ジョーが診療所の隣の小屋に連れ帰る――というのが、前半のストーリー。

名医であるジョーの治療のおかげで、エリザベスは焼けただれた火傷も治癒し、視力も取り戻した訳ですが、彼女の求愛をすげなく撥ねつけるジョー。しかし、彼女は「この集落で暮す」と宣言し、ルーンと共に出て行ってしまいます。二人が計画したのは、砂金を見つけること。しかし、そのための設備費をこっそり出していたのは、ジョーだった……エリザベスが金鉱を発見するなどの大ドラマがあったかと思えば、最後は縛り首の木で処刑されようとしていた彼を金鉱の利権と引き換えに救ったのが、彼女だというハッピーエンドなのが、爽やかな後味を残しています。

              

「俺は、縛り首の木の下で、新しい愛を知った」というナレーションが流れ、エリザベスのもとに跪くクーパーのクローズアップ……実に、素晴らしい!!

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