ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

伝説のジャクリーン

2015-09-23 18:36:10 | 本のレビュー

「伝説のジャクリーン」扶桑社。カトリーヌ・パンコル著。阪田由美子訳。
 
若い頃に買った本だが、数日ほど前再読。

私は、昔からジャクリーン・ケネディのファンで、その人生については大体知っているのだけれど、この本は訳文の流麗さも素晴らしく、扉に何ページか載せられたジャクリーンの写真の美しさと共に、何とも魅力的な本にしあがっている。

これが、扉ページの載せられた(多分、大統領夫人だった頃の)ジャッキーの写真。独特の目と目が離れた癖のある顔立ちや輝く瞳とともに、ジャクリーン・ケネディ・オナシスという人の魅力が存分にあらわれでているのではないだろうか?
そして、自分の魅力を知りつくしたファッションの素晴らしさ!も。

誰もが知っているように、彼女はアメリカの歴史に残る英雄JFKの妻であり、その暗殺後ギリシアの海運王オナシスと結婚した。このけたはずれの男たちと結婚したジャクリーンというのは、どういう人だったのか?

大統領夫人だった頃から、ジャクリーンは、ホワイトハウスの室内装飾やらインテリア、高級デザイナーの服に浪費したといわれる。抜群のセンスに恵まれていたとはいえ、室内の壁紙やインテリアを完璧にととのえたと思ったら、それをまた取り崩し、新しい装飾を考えずにはいられないというのは凄まじい。宝石、服、靴、絹のストッキング、手袋、置時計、絵画…不安を取り除いてくれるものなら、何でもよかったとあるが、ジャクリーンは有名な浪費癖とは、別に類まれな知性を持つ女性でもあった。
これが、彼女の栄光であり、悲劇であったともいえる。彼女の歴史感覚があったからこそ、ケネディ家はかくも伝説的存在になったとさえいえるのだ。

ジョン・ケネディとの生活は平穏なものとはいえなかったとも言われるが、1963年、ケネディがダラスで暗殺された時、ジャクリーヌが手配した葬儀の大掛かりさは、この若き大統領を永遠の存在にした。これ以後、アメリカはベトナム戦争など、絶頂の60年代から、泥沼の時期にはまっていくのだが、ケネディ大統領の時代は、アメリカ国民の胸に「輝ける時代」として刻まれることとなる。

ケネディの死から6年後、ジャクリーンはオナシスと再婚した。世界じゅうを驚かせ、憤慨させた結婚。ココ・シャネルなどは、「あの人が威厳をもって生まれてこなかったことは知っているわ」と言ったと伝えられているが、果たして事実はどのようなものだろう?
世界中に衛星中継されたケネディ暗殺の映像…あの時の彼女の恐怖と悲しみ。オープンカーによつん這いになり、パニック状態となった自分の姿は、一種のフラッシュバックとなり、ずっと彼女を苦しめつづけたといわれるが、そうした大きな喪失や悲劇を味わった後は、穴埋めする存在も大きなものでなくてはならなかったのではないか?
「お金につられた」と悪口を言われようとも、おとぎ話の王様のような大金持ちがあらわれたら…・。


オナシスの娘、クリスティーナはジャクリーヌを嫌い、「あの女がケネディ家の悲運を運んで来たのだ」といったとも言われる。
事実、オナシスの息子アレクサンダーはヘリコプターが墜落して死に、オナシスの先妻の突然の死、そしてオナシス自身の死も続いた。

こんな風に見ると、ジャクリーヌ・ケネディという人の佇まいには、どこか不思議な魔力があるようにさえ感じられる。繊細な芸術家の精神を持ちながら、どこか破滅的な影響を及ぼすというような…。


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